〔9〕トラブルに負けないで!

先週の『小さな一歩』について沢山のお便りいただきました。ステキなヒント、大切な言葉、本当にありがとうございます。最近では、みなさんに「一歩一歩先に進む強さと勇気」を与えてもらってるようが気がします。私と同じような気持ちで働いている人が、決して辛い思いをしないよう、トラブルに巻きこまれることのないよう、そんな風に祈りながら、今週は派遣に多いトラブルについて書いてみました。

派遣スタッフとして働くことになると、そこには必ず“契約”というものが存在する。単発(1日だけ)、短期(数週間のものから数ヶ月のもまで)、そして長期(26業業務に関しては一応3年、それ以外は1年)と簡単に言うとこの3パターンが主流だろう。

就業先が決まれば、派遣会社からは必ず“就業契約書”が送付されてくるが、これを頭から信じこんでしまうと、とんでもないトラブルに巻き込まれることになる場合が、ある。というのも、私の周りでは契約期間内に強制的に終了させられる“事件”がけっこう多いからだ。

ある友人は「長く働いて欲しい」という企業側の希望に応え、3カ月更新の長期で大手の企業で働きはじめた。1年が過ぎようとしていた頃、派遣会社の方から「まだ契約途中だが、今月末で契約が終了ということになりました」と一方的に告げられた。友人は「あまりに急だよ。更新したばかりなのに。しかも辞めるまであと1カ月もないんだよ。どうしよう。」と途方にくれていた。

驚かずにいられないのは、こういったトラブルに巻き込まれた場合「え?そうなの?困ったな。でも仕方ないから次探そ。」でそのままなんの疑問も持たずに諦めてしまう人が意外にも多いということだ。

そんな話を聞く度に、私は「ちょっと待って。それでいいの?」と問いかけるようにしている。

何故なら、契約期間内に上記のようなあまりに急な「解雇通告」を受けた場合には、“解雇予告手当”がもらえるからだ。

労働基準法第20条には下記のような法がある。「解雇をする場合、使用者は少なくとも30日前にその予告をするか、予告をしないときは平均賃金の30日分以上の“解雇予告手当”を支払わなければならない」

(平均賃金とは「30日-解雇通告から解雇までの残り日数分」を解雇予告手当として受け取ることがでる。例えば、解雇まで10日であれば、30-10=20日分となる。)

登録型の派遣労働者も、派遣期間が2ヵ月を超える労働契約の場合や派遣期間が2ヵ月でも契約を延長されていたり、契約が反復更新されている場合には、この解雇予告手当の支払が義務づけられるわけだ。

契約が3カ月更新、次の契約終了までに2カ月もあり、しかもその月内に急に通告をされた友人は激怒し、ケンカ腰で何度も派遣会社とやりとりをしたすえ、結局通告された日から辞める日までの時給を大幅アップしてもらうことによりこの問題に終止符を打った。

この友人の例は非常に稀ではあるが、私の周りではこういった契約期間内の解雇というはかなり多い。冷静に話し合って、間をあけずに次の派遣先を探してもらったり、頼み込んで期間をもう1カ月先延ばししてもらった、などというケースもよく耳にする。

派遣先側の勝手な判断に文句1つ言えず、「契約終了です。でも○○さんなら次はもっといい企業さんで使ってもらえるはずですよ」など無責任に言い放ち、挙句の果てには逃げてしまう派遣会社の営業マンのなんと多いことか。

私に言わせりゃ「そりゃ、あんたのマッチングのミスか、契約が何たるかをきちんと派遣先企業に理解させてないからじゃないか!」と思うのだが。

こういうトラブルに遭った場合、「面倒なことになるのは嫌」という気持ちが生じてしまったり、「あまりうるさく文句を言うと次の企業を紹介してもらえないのでは?」などという弱気な姿勢になってしまったりしがちだが、それは二の次。

もしもあなたが何らかのトラブルに見舞われた場合、“やってもらうべきこと”はきちんとやってもらい、“もらうべきもの”はしっかりもらおう。

2001.08.09

〔8〕小さな一歩

私は気が小さい。大きな騒ぎを起こして、自分がその場所に居づらくなるくらいなら、何もアクションを起こさず、じっとしていた方が身の為だと思っている、ある意味、卑怯な人間だ。

今までの私は何かに対し、憤りを感じたり、失望したりするようなことがあっても、その核心に触れることを敢えて避け、それを忘れるための“別の物”を探すことが得意だった。そうやっていくつもの「本来であれば自分で解決しなければいけない出来事」から逃げていたのかもしれない。

今回そんな私が“時間の使い方にマイッた(4号)”“その後の経過(6号)”にあるように、ひどく怒った。会社側の扱いにひどい憤りを感じ、それを(第三者ではあるが)派遣会社の営業にぶちまけ、身の潔白を証明して欲しいと頼んだ。

あの時、私はどうしてあんなに、夜も眠れないほどに怒ったのだろう。

ふと冷静に考えた時、「自分という存在を認めてもらえなかったから」と漠然と思った。“派遣社員”“女性”とかそんな理由で「ゴミ箱的な存在」にされるなんてまっぴらごめんだ、私は痛切にそう感じたわけだ。

いくら派遣社員が普通の企業に浸透してきたと言っても、まだまだ“派遣”=“パート”という図式はあるのかもしれない。「派遣社員なんだから、いいように使おう」。そういう考え方は根強く残っている。もちろん私はそれでも仕方ないと思っている。こっちは“使われる側”なんだから、上の人達がどんな考え方を持とうが、それを否定することはできない。

ただ、あの事件をきっかけに「一緒に仕事をしていく以上、派遣だろうが、正社員だろうが、理解しあわないといけない部分はもっと他にあるのではないだろうか」と思うことが最近多くなってきた。

怒りは何も生み出さない。訴えただけでは残業は減らない。一気に180度状況が変わるなんてありえないんだ。だとしたら小さな気になることから少しずつ解決していかなくてはいけないんじゃないか。

この会社に身を置いて約1年半。度を越えた業務量に疲れ果て、自分の限界を感じ、契約を切ろうと考えたことも何度もあった。でも、私は更新を繰り返した。

何故だろう。たぶんそれは、私はいつのまにか「この会社の、この仕事が好きになっていたから」なんだと思う。

「パート気分で仕事をしてる”?“腰掛け的に働いてる”?派遣をそんな目で見る人がいるけど、そんな風に考えたこと私は一度もないよ。ここの、この仕事が好きだからこうしてここにいるんだよ。私は仕事をしながら“業務がもっとうまく流れる方法はないか”といつも模索してる。何かあった時本気で怒ったり、泣いてしまったりする。それは全てこの仕事が好きだからなんだ」

もしかすると、そういう気持ちをまず伝えるべきなんだ。一緒に仕事をしている人たちに自分できちんと。

まだまだ甘いかもしれないけど、それが、自分の存在を認めてもらう、私流の小さな最初の第一歩かもしれないな。

2001.08.02