今から43年前、「ミニ」はイギリス内にはびこったドイツの小型車を駆逐すべく、純潔イギリスの小型車として開発されました。開発したのはBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)という会社ですが、販売店の系列があり、モーリスでは「モーリス・ミニマイナー」、オースチンでは「オースチン・セブン」としてデビューしました。いわゆる双子車です。
その後生産元はブリティッシュ・レイランド、オースチン・ローバー等と名を変え、2000年の生産中止までの42年間で約538万台を生産しました。
「ミニ」の開発に要求されたコンセプトは「大人4人が無理なく乗れてスピードも出て、経済性にも優れ、高度な走行性能と快適な乗り心地も両立する。というものでした。ところがBMCに存在するエンジンでは大きすぎてとても無理。そこで最初から根本設計を見直し、エンジンを横置きにして、トランスミッションをクランクシャフトの真下に置くなど、今までにないレイアウトを採用しました。
結果できあがったクルマは全長わずか3050mmというコンパクトなボディサイズに、四輪独立懸架、フロントエンジンフロントドライブという、現在のコンパクトカーの原型を作ったのでした。
しかし、その42年のあいだコツコツ改良されてきたかというとそうではなくいかにもイギリス車の無骨さといいかげんさを備え持ったクルマで、刻々と進歩するドイツ車とは対照的です。したがって、その可憐なスタイルとは裏腹に乗りこなすのは大変。例えば、イギリス車の伝統で電気系統はものすごく弱く、雨の日や夜はなるべく乗らない方がよい。また、寒冷なヨーロッパ車の常で日本の暑さに弱くオーバーヒートなどしょっちゅうだといいます。しかし、できの悪い子ほどかわいいというのか、熱烈なファンも多く、生産中止となっているにもかかわらず今なお部品に事欠くことはないともいいます。
日本でもイマイチ売れなかった原因は上記のように国産車では考えられない故障が日常茶飯事に起こるということ以外に、日本には軽自動車という枠があったことも原因の1つです。
ミニはボディこそ小さいけれども、エンジンは1.3リッターあり軽自動車の枠にはまらない。当然小型車として登録するしかなく税金も小型車並。それならば軽自動車の方がよいということになり日本での売れ行きがイマイチ伸びなかったのです。
さて、2000年に生産中止になったミニですが、今年3月に新しいミニとして復活しました。今度のミニはイギリス産ではなくドイツのBMWが生産しています。イギリスの伝統的なクルマであるミニがドイツのBMWによって復活したというのは驚きであり、昔を懐かしむミニファンにとっては微妙な心境でしょう。
しかし、時代とともに生きていかねばならないとすれば、ノスタルジックな気分に浸ってばかりもいられません。BMWミニは新しいボディをまとい、心臓部もかなりパワフルで魅力的です。古き良きミニを愛する私ですが、新しいミニも拍手を持って迎えたいと思うのであります。
新生「ミニ」のトップモデル「ミニクーパーS」はインター・クーラー付きスーパーチャージャー搭載の排気量1.6リットル直列4気筒エンジンを採用し、最高出力163ps(120kW)/6000rpm、最大トルク22.3kgm(219Nm)/4000rpmを発生する。 ボディカラーには、2色の専用カラー(エレクトリック・ブルー・メタリックとダーク・シルバー・メタリック)を含む8種類を用意。右ハンドル仕様。価格は6速MT車で260万円。製品名 MINI COOPER S