「魅力」をかんじる感性は、誰にでもあるね。
それに個々が魅力というばあい、それに対応する尺度があるよ。人は、社会のなかで生きているのだから、当然、社会全般の尺度に染められている。
また、個々のかんがえる魅力といってもかなり曖昧だよ。美しさや強さとなれば多くの人が認める魅力であるが、実際の美しさや強さの具体例となると、皆、異なってくる。
これらは、個々の好みとしかいえないからね。
ただしだよ。社会的な尺度となると、多少、形がみえてくる。ぼやけてはいるが、共通認識という尺度がそこに姿をあらわす。
これが他ならぬ道徳となり、敷いては規則や法律へと姿を変えていくものだ。こうなると、もはや個々の好みでは済まなくなる。
さて、現代社会の尺度からいえば、「魅力」にたいする美しさの比重が総体的に増しているよ。つまり、現在の尺度によると、美しさをもつ人々はかなりアドバンテージをもって生まれてきたといっていい。
例えば、同じ仕事をしたとしても、評価されるのは美しさを持った者のほうになる。それどころか、美しさを持っているだけで、一つの仕事をすでに成し遂げてさえいるだろう。
現在は、美しさの力を存分に発揮できる環境下にある。これが、女の時代をおおきく下支えする要因であることを忘れてならないよ。
さて、ここでも問題は男であるわけだが、あなたたちは本当に今の社会の現状を認識しているかね?
今の社会の尺度によると、男はすなわち「悪」であるという立場にある。少なくとも、そういった傾向にある。
男がどうこうというより、初めから男が悪いという結論がすでに用意されている。生まれながらにして彼らは、悪のレッテルを貼られているわけだ。
それというのも、あなたたちが怠ってきたことに原因があるよ。
だって、本当に見た目はよくないし、臭くだってある。
見た目が悪いなら、せめて工夫をしてみるなり、臭かったら香水を使ってみるなりしたらどう?
女はやっていることだよ。むしろ、能力のひくい男がどうしてやらないの?
だって、誰しも臭いのは嫌だし、汚いものは避けたいもの。それらは、ほぼ共通認識だよ。
どうして劣勢なあなたが、社会的評価を高める努力をしないのかね? そもそも、ほとんどの生物の男女(雄雌)は、劣勢なほうが綺麗だよ。
当たりまえだよ。劣勢だからこそ、異性に気に入られようと綺麗になるんだから。雄のほうが綺麗な生物もおおいが、彼らは劣勢だからそうなったんだ。努めたんだ。
劣勢に転じたあなたが、そこで怠けてどうするの?
それともこの期に及んで、まだ男はそんなことをする必要がない――とでもいうのかね。あなたがたの社会的評価が低いのも、そもそも誰のせいでもない、努力もせず、主張もしなかった当然の帰結なんだよ。
どう? 少しは勇気を出してみない?
椎名蘭太郎