[18]悪徳商法

しばらく続いた刺激のない日々に飽きてきた私は、以前から細々と準備を始めていた内職を本格的に始めようと動き始めることにした。
とにかく試験を受けないと仕事が始められない為、私は毎日勉強に勤しんだ。数年前に1本の電話をきっかけに内職仕事の為の勉強を始めるも、何度も何度も試験に失敗していた。だから実のところまだ収入にはなっていなかった。そんな経緯もあり試験直前、「もしも今回も試験が通らなかったら・・・」との不安から違う仕事を同時に探したりもしていた。
そんな私の生活を暫く見ていた男が言った。
「オマエさぁ、オマエがやっている内職ってのは本当にお金になるの?」
その頃本気で内職で生活をしようと考えていた私は、男のそのひと言に「カチン!」ときた。カチンときた私は、仕事を紹介すると言って私が契約した会社についていろいろと調べてみることにした。
会社名で検索、内職で検索、副業で検索、などなど考えられそうなありとあらゆる言葉を入力して、食べることも忘れるくらい夢中で調べ続けた。もちろん「ちゃんと仕事があってお金になる。」という経験談を知りたくてという理由からだ。
しかし・・・結果は散々なものだった。どうやら私は、「内職商法」とやらに騙されていたようだ。
仕事を紹介すると言って、高額の教材を売りつけたあげく、全く仕事を紹介しない。というより仕事を紹介するまでに至らせない。これが「内職商法」だ。
冒頭に書いた私の実体験そのものだ。私は愕然とした。私の人生計画はガタガタと崩れ落ちた。
男なんかに頼らずに生きていこうと思って探した仕事だった。だから男に言われたひと言に「カチン」ときた。その事がきっかけで「内職商法=悪徳商法」に騙されていた事実を知った。
奇しくも男への反発が最悪の現実を知るきっかけとなったことで、私はさらに男を尊敬し頼ることになったのである。
早乙女夢乃

[17]意味?

私はこれまでなにをしてきたのだろう?
この世の出来事には、すべて意味があるという。
そうかもしれない。そう思えるなら、確かにそうなるだろう。裏をかえせば、すべての出来事には意味がないともいえる。
我々が、男であり女であることにも重要な意味が隠されているだろうか?
そのなかに、その別けられたもののなかにさえ・・・。
じっくり考えてみてほしい。
男と女はシーソーだ。絶えまなく動くそれ、軽やかに、そしてときおり烈火のごとく動くそれ。
シーソーは動く。
人知れず動きゆく。
あなたは男として在るか、女として在るだろう。
でも、そんなのはどっちだってかまわないよ。男と女の二つが、一つの連動となり、世界の螺旋をえがいている――人の体をつくりだす設計図とおなじよう、うつくしくも儚い物語として。
意識はアップダウンを繰り返し、螺旋をえがきつつ、とびとびに上昇・下降する。
我々の意識は波のようなものだ。昇ったあとは、かならず下降し、下降したら昇るしかない。波のようにアップダウンを繰り返し、ぐるぐるまわって螺旋をえがきつつ、エネルギーを放出したり蓄えたりする。
ただし、意識レベルが上昇・下降するのは、とびとびにだ。
エネルギーが1.00であろうと、1.99であろうと、レベル1にはちがいない。
2レベルではない。
エネルギーが2.00になってこそ、初めてあなたの意識レベルは飛躍する。我々が、ときおり突如として飛躍をかんじるのは、エネルギーの蓄積によって1から2となり、2から3になっているためだ。
飛躍は一気にくる。ドミノが倒されるようにね。それこそがブレークスルーと云われるものだ。
それにしても、我々はなんという年月を費やしてきたのだろう。その過程で、どれほどもがき苦しんだろう。
もちろん、苦しんだのはあなただけじゃなかった。すべての生命が苦しんできた。
今、この時も、苦しみの最中で途方にくれるものがいる。
どうして?
我々はシーソーに揺られてきた。
あるときは強さを求め、別のときは正義をもとめ、またときには愛を、異性をもとめてきた。そのたびに、打ちひしがれなければならなかった。
喜びと悲しみが、シーソーのように繰り返しおとずれた。
男女も、人生も、それはドラマだった。
幾度となく繰り返されるドラマだ。終わりのない、ゴールのみえない旅だった。
これらの物語は、一つのもののために、ただそれだけのもののために繰り返されてきた。ひとえに、恋焦がれるまでの、思いだけがそこにあった。それが原動力だった。
すべてのことに意味があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいい。それらはシーソーだった。そして今、シーソーを知り、理解しさえすれば、それは越えられるものであることを学ぼうとしている。
椎名蘭太郎