[18]交際は早々に終了(;;)

オーネットで知り合った彼と交際開始。潔い性分の私は、いっそのことオーネットをやめてしまおうかとまで考えたが、結局は特別休止にした。蓋を開けてみれば大人な判断だったと思う。何しろ、1ヶ月そこそこで彼との交際は終焉したのだ。
理由は実に曖昧で、価値観の違いとでも言うのだろうか。ええ年した男女の価値観はかなり強硬ならしく、歩み寄るのは難しい。「この人だ!」と思ったのは思い違いのようで、もう長い間、恋愛とは無縁だったので、勘や感性が鈍っているのかもしれない。お互い特に不便のない生活をしていれば恋愛に執着できないのだろうか。
とはいえ、特別休止は自動的に1ヶ月で解かれ(とりあえず1ヶ月にしていたのかも)、次の紹介書が来ていた。全国版の情報誌も送られてくる。休止にしていても送られてくるのだが、ここで誰かに申し込んでしまうと休止は無効になってしまうので要注意。
情報誌を手に、「スペックだけでわかるかよ?!」と毒づきたくなるが、かといって他に出逢いのチャンスはない。このままでは自分が不憫なような気がして、スペックの羅列を懸命に読む姿は我ながら滑稽だが、こうして毎月送られてくる情報誌に夢を託している男女が全国各地にいるのだと思うと、心なしか心強い。同類相哀れむ?!
その情報誌で一人の男性が目に留まった。データマッチングでヒットしたらしく、相手から申込書が送られてきたものの、前出の彼との交際を目前に、お断り返却してしまった最有力候補者だ。
どうなるかわからない恋に操を立ててしまった生真面目な自分が恨めしい。が、チャンスはあるのだ。一度お断りしても、この情報誌に対して申込が出来るはず。運命の人かもしれない!と懲りない私・・・。断った相手なのだから断られる可能性はあるが、この際あたって砕けろだと思い、申込をしてみた。さて、どうなることやら。
本城愛子

[10]遺伝子への隷属

人は、遺伝子の支配からのがれられない。遺伝子と人との関係には、まぎれもない上下関係がある。遺伝子が主であり、あなたがたの意志がそれへの従となる。
生物は、遺伝子の要求に背くことができない。生物の頂点にたつ人間も、その点においてまったくの無力だ。遺伝子の目的は、自らを大量かつ持続的にコピーすることにある。あまり大量にコピーしすぎると、むしろ戦略的に破綻することを遺伝子は学んだ。逆に、少なすぎても持続的に存続できない。これらのバランスを学びながら、遺伝子はあなたたちを操作してきた。人がエゴイストなのは、あなたたちの主である遺伝子の性質を反映しているに過ぎない。
生物は、大量かつ持続的にコピーしようとする遺伝子の要求にしたがって動いている。男女と呼ばれるものも、遺伝子の発明品の一つだ。
かつて地球上の環境に、二つのタイプが生まれた。これを洗練させて登場したのが男女だった。この二つのタイプがそれぞれの役割を担うことによって、男女の質のちがいが明確となり、ユニークさを増していった。両者の質のちがいを挙げるなら、男は広く浅く、女は狭く深くとなる。これらは、両者が環境に対応することによって特徴づけられた。男は、食料の確保をはかるため、外の世界に挑戦しなければならなかった。となれば、視野が広くなる。広くなれば、浅くならざるを得ない。深くほりさげられるはずがない。一方、女は子供を産み、家を守る。守備範囲は一定であり、狭いがゆえにその範囲において深くなった。それだけのことだ。
これらは、愛をみればよく分かる。女は、一人の者を深く愛することができるが、全体への愛に目をむけることができない。逆に男は、全体への愛に目をむけることはできるが、けっして深いものではない。セックスにしても、女のオルガニズムは深く、男のそれは浅い。
両者の質のちがいは、環境によって生まれたもの――。女は狭い範囲で暮すために、より緊密なコミュニケーションが不可欠となる。つまり、彼女たちは日頃からよく顔をあわす者とのコミュニケーションを重視せざるをえない。これに対して男は、外へいく。外の世界で気をつけるべきことは、物理反応となる。これが、女は人とのコミュニケーションを重視し、男が物理反応に意識をむけるゆえんだ。
考えてみて欲しい。なぜ、男女の役割分担がはっきりした方が有利であったかを。これは、実に簡単だ。効率だけの問題なのだ。一方が遺伝子をのこすため、もう一方が食料を確保するための専門となる。それぞれが、専門的になったほうが効率的に決まっている。では、三つのタイプができればもっと効率的でないかと考えるだろう。それはそうかもしれない。が、三角関係はむずかしい。自然は、シンプルで分かりやすい形を望んでいる。男女に善悪、陰陽など――これらはしごく単純であって分かりやすい。
遺伝子は、環境の変化によって戦略を次々にかえてきた。が、いくら変えようとも、その目的は大量かつ持続的なコピーにある。人は、嬉しかろうが悲しかろうが、遺伝子によって変わっていく。あなたの細胞の一つ一つには、その遺伝子の要求が刻み込まれている。どうして逆らえよう?そして、遺伝子の最大の武器はなんといってもセックスだ。セックスは、ドラッグなみの快感をあたえてくれる。もし、セックスに快感がともなわなかったら、あなたがたは子孫を残すかね?そんなわけがない。生物はとっくに滅んでいたよ。誰が、快感なしにそんな労力をつかうかね。
それでも人は、確かに遺伝子を超えることができる。遺伝子を完全に理解しさえすれば・・・。どちらにせよ、我々は遺伝子の道具であることを忘れてはならない。
椎名蘭太郎