社長となった男は、その日以降私を完全なる金庫番に仕立て上げようと行動を開始した。
「社長にもなると従業員の面倒を見るのがいろいろと大変なんだよ。」とか、「世話のかかる従業員が多くて大変なんだよ。」とか私には全く関係ないと思うような理由付けをして少しずつ私の現金を持っていくのだ。
もちろん私はそういう時、「なんで私が出さないといけないの?」と毎回言うのだが、男はすかさずお決まりの言葉を発する。「俺とオマエの仲じゃないか。」
私は、「俺とオマエの仲ってなによ!」と思いながらもその言葉に酔わされていたのだろう。
男と出会っていろんなやりとりを経てそれなりの信頼関係が築かれていたことに加えて、私もそれなりに男にお世話になっているという後ろめたさとでもいうのだろうか、さらに今まで何度も貸したお金が返ってきた実体験、そして毎回貸してほしいと言われる金額が小額なことで私はついつい「仕方ないなぁ。」という気持ちになりお金を差し出してしまうのだ。
1回1回の金額は小額なのだが、出会った当初と違っていった点がある。まぁ説明せずとも分かっていただけるとは思うが、「現金」そのものを貸して欲しいと言われることだ。
2万円程度の時は比較的すんなりと出してしまっていた私。5万円前後のときはひと言嫌味を言ってはみるもののやはり意外と抵抗無く差し出してしまっていた私。そして10万円、15万円、20万円と、徐々に1回の金額が多くなっていったのだ。
徐々に金額を増やされていった事とその頃には男に貸すことが当然とでもいうかのように平然と私からお金を引き出していくようになった男。そのあまりにも自然な話術からなのか、その頃には私の金銭感覚もすっかり麻痺していたのだ。
今考えれば、これら全ては男の計算通りのストーリーだったのだろう。だからこそ、当初は1回に私から引き出す金額を少なくして徐々に徐々に金額を増やし私の金銭感覚を麻痺させ、呪いにかけるような話術で私からお金を引き出したのだ。
そんなことを繰り返すうちに、少しずつ少しずつ貸し金は積み重なっていった・・・
早乙女夢乃
[15]私の出逢いの行方は?!
私の活動はどうなっているのかと言えば、まず、オーネットに入会してまもなく、居住地で開催された大勢のパーティ(酒あり・夕方開催)に出席した。そのうちの一人とまあまあ気が合い、私を気に入ってくれた様子。見た目は割と好みで性格はまじめ。こんな人と結婚したら幸せになるんだろうな、と思い込もうとしたのだが、一夜明けて酔いが醒めたら、声がタイプじゃなかったとかまじめすぎるとか、心が拒否モードに・・・。結局、二度と会うことなくお断りした。
その頃、私の本紹介書(写真有りで連絡先なし)を見て一通の気になる本紹介書(写真有りで連絡先有り)が届く。この時点でお断りする場合も多々あるのだが、それが驚くほど男前で年齢も随分若く、履歴なども良く、一気に心が傾く。なぜ、こんなに若い人が子持ちの私に?という猜疑心もあったが、早速メールで連絡を取り、やりとりが始まる。数日のメールは好感触で、期待して会ったのだが、写真と実物のギャップ、イメージしていた声のギャップを感じた。百歩譲ってそこまではいいとしても、発言や考え方の青臭さにうんざりして、終了。
この間にも色々紹介書は届いていたのだが、前出の彼の終了とときを同じくして、また気になる紹介書(写真ありで連絡先なし)が届く。私のデータは男性会員に出回っているし、毎月紹介してくれる人がいるので、次々と新しいチャンスはあるのだ。執着する理由がないというのはシステムの問題かもしれないが、好きになれないのだから仕方ない。で、気になる紹介書の人に早速オーケーの返事を出す。私の連絡先入りのデータが彼に届き、連絡を待つのだが・・・。
本城愛子