前回記した簡易版紹介書に対して、「本紹介書」と呼ばれるものがある。これは顔写真を含め、より詳細な自己紹介が記録されているわけだが、ふたパターンあり、写真なしの簡易紹介書を見て、とりあえずオーケーを出した後、こちらの本紹介書が送られる場合は電話、メールアドレスなど連絡方法は記載されていない。が、相手がその写真付きの紹介書を見てオーケーを出した後に送られる本紹介書は連絡先が記載されている。住所はいずれも記載されていない。
これはどういうことかと言えば、写真付きのより詳細なデータを見て、お互いが気に入って初めて連絡先が行く、ということである。まあ、複数に平行して紹介書が行き交うというシステムの性格上、連絡先を知ったからと言って、必ずしも連絡をするとは限らないのだが、双方の好みが少なからず合ったことになり、可能性は芽生えたということだろう。
で、簡易紹介書にプラスして、本紹介書には何が書かれているかと言えば、紹介文がもうひとつ。より深い自己紹介を書く場であり、自己PRのチャンスである。しかし、皆、初度紹介書と似たりよったりのことを書いており、大したことを書いていないというのが個人的な感想である。そして、家族紹介の部分には、年齢と別居か同居か、親権・扶養の有無に加えて、家族の職業が書かれている。が、証明書を出す必要はないので真偽は確証なし。
さらに、学歴と在籍の西暦だけの簡易バージョンに対して学校名も記載されている。これは卒業証書を取り寄せるので、嘘の記載は不可能だ。また、サラリーマンの場合、勤務先を記入する。私の場合は自営業で、確定申告の控えなど証明は求められなかったが、勤め人の場合は源泉などを提出する必要があるかもしれない。必須の証明諸関係は、行政で発行してもらう独身証明書または戸籍謄本、学歴証明の2点であった。尚、独身証明書は最初の入会時に提出すれば再提出は求められない。また、写真はモノクロの4?5センチ角のものである。
本城愛子
[09]リップサービス話術
私が男に送迎をしてもらうようになってから、私の労働時間は増えていった。体力的には厳しいものの働いただけのバイト代は入ってきていたので頑張ることが出来ていた。
そんな生活を暫く続けるうちに、男は私のことを自分の女扱いするようになる。
「オマエは俺のこと愛しているのだろう分かっているよ。」
「オマエは俺がいなくなったら生きていけないだろう。」
「安心しろ、俺はオマエを裏切ったりしないから。」
「オマエは絶対俺から離れられない。なぜなら俺の最後の女になるんだから。」などとよく口にしていた。
今考えれば、よくもまぁここまでのリップサービスが口から出てくるものだと思ってしまうが、男への信用度が上がってきていた当時は「そんなことない」と思いながらも、このような言葉を言われてまんざら悪い気分にはならなかったことを覚えている。でもまぁ、その言葉を最初から鵜呑みにしたわけではなく暫くは軽く聞き流すことにしていた。
しかし、ある日のことだ。店で私がお客さんとトラブルになった。お客の行き過ぎた行動が原因にあるのだが、お客は私が悪いと言って怒り出す。どう対処したら良いか困惑しているところに、ベストタイミングで男が現れた。そして男の力量発揮。紳士な対応でお客を落ち着かせ私を助けてくれたのだ。無論、以後その客は二度と現れることはなかった。
そんな出来事があってからというもの、男を更に信用し頼るようになった私は、彼の女になるのも悪くないかも。と思い始めていたのだ。まぁ、私がそう思うようになったからといってその後の男の対応が急激に変わったわけではないし、私が「貴方の女になります」と宣言したわけでもないので、いつ女なったのかははっきり言うことができない。ただ、その頃から私は何か困ったことがあってもこの人が何とかしてくれるという安心感を手に入れた気分でいた事は確かである。
一歩ずつ忍び寄っていた「アカサギ」という「蟻地獄」に、私はその日から急激に吸い込まれていくことになった・・・安心感という目に見えない信用と引き換えに・・・
早乙女夢乃