[11]システムの盲点とは?

データでマッチした人を毎月紹介され、パーティも開催され、入会しておよそ3ヶ月後には、全国版の会員誌に載る。ちなみに私はこの情報誌に載った後、全国各地から三十通以上の申込が来た。また、自分も誰かに紹介されているわけだから、次々に出逢いのチャンスがある。そして、紹介状で気に入って、申込を受けるとお互いに連絡を取り合って会うことが可能となる。
とりあえず会ってみなくてはわからないと思って申込を受けまくる人、逆に紹介状を吟味して、意を決して会う人との間には自ずと意識に差がでてくるだろう。また、同時に複数人の申込を受領することも可能だから、どこまでを恋愛関係と呼ぶかは別として、多重恋愛が横行できるシステムと言える。
実際、このような意識の温度差で、突然、他の人と交際することにしました、と言って断られた事例(会員誌の投稿より)もあるわけで、システムを考えると何ら不思議ではない。要は複数人の異性と同時に会った上で、比較検討されていたわけだ。さらに言えば、結婚したい人が集うわけだから、結婚詐欺師にとっては確実なカモ、またナンパ師にとっても手っ取り早く恋愛に持ち込める確率の高い相手の集いと言えよう。
恐ろしいのは、詐欺師やナンパ師でなくとも、結婚したいがために、あるいはよりよい相手と巡り会う可能性を求めて、あっちがだめならこっちをキープという、不埒な心が芽生えるシステムである、という点だ。
私の場合、案外曲がったことが嫌いであり、複数の交際を受けるなど器用なことはできず、またあちこちと会う暇も気力もないため、紹介状を吟味した上で、これまで3名の男性と会ってみた。そのいきさつは次回に。
本城愛子

[07]返されたお金の意味

男の家の合鍵を持つようになってからというもの、日に日に男が私に頼みごとをする頻度が増していった。
シャンプー・ボディソープ等の生活雑貨から始まり、Yシャツ・ネクタイ・部屋着・靴下・下着と恋人や配偶者以外の女性に頼むにはちょっと行きすぎではないか…と思うような品物を平気で頼んできた。他人の下着を買うことに抵抗はなかったの?何故断らなかったの?と思う方もいるでしょう。不思議なもので、他人の下着でもどんな物かは指定されていたし、婚姻暦ありの私にはあまり抵抗を感じなかったのである。
次に頼まれた事は、男の使用する携帯電話の料金を支払ってくることであった。当時忙しく働いていた男の携帯電話料金は私の金銭感覚ではかなりの高額であった。さらに今までは頼まれる時に先払いでお金を渡されたのだが、その時は違った。「今ちょっと手持ちがないから悪いけど先に支払っておいてくれるかな。」と言われた。
もちろん躊躇したものの、いろいろお世話になっていたし男の店である夜のバイト代は結構良かったので手持ちはあった。躊躇している様子を感じた男はすかさず「直ぐに返すから心配するな。」と言ってきた。そして私は、不安を抱きながらもコンビニへ支払いに行くことになった。
数日後、男は言ったとおり携帯電話の立替代を返してきた。返されたお金は多少多かったのでお釣りを出そうとすると、「お釣りはやるから子供に飯でも食わせてやれ。」と言われた。それ程多くなかったこともあり、私はその言葉に甘えることにした。
この出来事があったことで、「この人はちゃんと返してくれる人なんだ。」と、私の中での男のカブが上がっていったことは紛れもない事実である。
しかし・・・この私の行動と心の動きは不味かった。男は何故お金を返してきたのか、当時の私はその意味にまだ気付くことができていなかった。作戦はアカサギの思うとおりに着々と進んでいたのである・・・
早乙女夢乃