[26]結局、退会を決意。

結婚したい気持ちはあるはずなのに、色々と考えるばかりでオーネットの活動期間が過ぎていく。そのうち、オーネットというスタイルで相手を探すことに疑問を感じ始めていた。子どもが急速に成長していく時期であり、何かと忙しいこともある。
私には、日々の育児もあるし、休日に子どもと何をして遊ぶか、という重要な課題があるのだ。成長記録ビデオの編集作業もたまっている。こうして子どもに心を砕くことが親以外の第三者にできるだろうかという思いがくすぶる中で、私はオーネット退会の決意をした。
ところで私の知人で長年不妊治療をしていた夫婦がいる。治療には費用がかかるし、精神的な苦痛も大きいと聞く。それでも我が子を抱くことを夢見て10年あまりがんばったらしいが、ついに諦めて、残りの人生は2人のために、2人で楽しく過ごそうと決めたらしい。そう決めた瞬間から2人の世界観は大きく変わった、と彼らは言っていた。肩の荷が下りたのだろう。オーネット退会を決意した気持ちと重なる。
結婚を諦めたわけではないが、結婚したい、両親が揃っていた方がいい、そうした呪縛から逃れ、自然の成り行きに任せようと思った瞬間、私は自由になれた気がした。何とも言えない開放感と充実感を得たのだ。もしかしたらこの先、異性との出会いがないかもしれない。それならそれでいいではないか、と思うのだ。バーチャルな出会いが錯綜する世界で、迷い戸惑いながら『結婚』に翻弄される必要がない分、まだマシだ。
私の場合、オーネットの費用は一括で支払っているのでいくらかの返戻金がある。入会してからの数ヶ月で大きく消費してしまう仕組みなので返戻金はたいした額ではない。費用は1年間で消費してしまうが、在籍期間は2年間。もし退会しなければ、払った会費(入会金を除く27万円程度)で2年間は在籍して活動することができるが、惰性で続けてしまうのは無駄だと判断した。
本城愛子