男女をかえりみれば、女はスタンダードで、男はノンスタンダードとなる。見方をかえれば、女は基本となり、男は挑戦となる。
ひとつの円を頭に描いてみるといい。その均等な円のなかに、女はほぼ収まるが、男の場合は円の上下や左右にずれ、収まらない者がおおい。
なぜなら男とは、挑戦のタイプであるためだ。男に天才が生まれれば、愚者が生まれたりするのは、ひとえに彼らが挑戦のタイプであることによる。
子供を産む女が基本であるのに対し、足かせのない男は挑戦ができる。その挑戦の成果を子供に還元することで、遺伝子としての、あるいは人としての進化をなすカラクリがそこにある。
そこで、男は知っておくといい。
もしあなたが中心からおおきくはなれ、辺境であえぐようなことがあったら、ぜひとも中心にもどってほしい。人は常に辺境でくるしみ、「初心に返る」ことに気づく生き物だからね。
子供のころは、なんと無邪気で、なんの考えも持ち合わせていなかったものかと思いを馳せながらね。
じつに、男は挑戦するタイプであるがゆえに様々なタイプがいるよ。彼らの場合、ひとつの男というカテゴリーではまとめにくい。
優れた者もいるだろうが、最下層もまた彼らとなる。円のなかに女たちが固まれば、その円の周囲には男たちが散らばっていく。
我々は、そのことにほとんど触れやしないが、どんな時代のどのような社会でも底辺にいたのは挑戦に敗れた男たちだった。
その構図は今でも変わらない。
にもかかわらず、我々はこの社会でもっとも底辺にいる彼らに光を当てたことは一度もなかった。彼らが男であり、醜くあり、変わっていたためだ。
彼らなど、まるでそもそも存在していなかったように抹殺してきた。
人は、彼らを踏み台にしてここまできた。今も、彼らを踏み台にしている。
確かに彼らは挑戦に失敗しただろう。変わってもいるだろう。
だが、そもそも挑戦には成功と失敗がつきものだよ。失敗がなければ成功などありえなかった。彼らの栄養分をとり、人類が成長してきた歴史を忘れてはならない。
椎名蘭太郎
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[38]男は、硬いか柔らかいか?
男女の本質は変わらない――と言ってきたが、肉体面にかんしてはあきらかに両者はちがうよ。そもそも、見た目がちがう。
見た目などおおきな問題にならない――という人もいるだろうが、見た目以上にその者を占うものはないよ。
男女は肉体面に異なるがゆえに、はっきりとした違いがある。たとえば、女の体は丸みがあり柔らかだが、実際、彼女達の内面には柔軟性がある。
男の場合、外見は硬く強そうだが、内面でも頑なで頑固におちいりやすい。
我々は、圧倒的に肉体に支配されている――といってもよい。
これは、遺伝子のどこの部分がつかわれたか。つまり、性ホルモンのちがいがおおきいだろう。
細胞分裂をする下等生物には男女(雄雌)は必要ない。
ただ、これにも問題はある。自己分裂では、突然変異でしか変化を期待できない。遺伝子の構造が単純であれば、それでも変化が期待できるが、構造が複雑になってくればうまいぐあいに変化することはほぼ期待できなくなる。
そこで、男女(雄雌)の二つが生まれたわけだ。二つの遺伝子を組み合わせることによって、バリエーションが一気にふえるからね。
そもそも、男女の誕生は、遺伝子が進化を遂げるための重要な転機だったわけだ。
原始的な生物、つまり我々の子孫をよくみてごらん。おおくが女のほうがおおきく、男は飾りのような存在でしかない。プロトタイプは女であったわけだからね。
ただしその後、生物がさらに進化すると、男にもDNAの配合だけでない役割というものがくわわりはじめる。せっかく二種類あるのだから、一方がただ配合の道具というより、別の役割もあったほうが有効であるという点に気づいたのだろう。生物の生存競争のなかで、それをうまく使った者が優位に立ったのだ。
こうして生態系の頂点にある人間の男女が今にいたっている。一見すると、男は柔軟性のない頑なな性におもわれがちだが、生物の歴史からみればそんなことはない。むしろ、女のほうが変わりにくい宿命を背負っている。
彼女達は、子供を産まなければならない。これは絶対条件だ。遺伝子にとって、これこそが至上の命令ということになる。
つまり、女は子供を産まなければならないがゆえに、変わりたくても制限がもうけられている。それにくらべ、男はなんと自由なことだろうね。別に、あなたにはこれといった制限はみあたらない。
いかにも頑なで頑固そうにみえるのは、それはこれまでの男の歴史がそうであったがためだ。外敵と戦わなければならなかったからね。
でももはや、そんな力は必要ない。生物は、いかにして今の環境に適応するか否かが重要だ。過去のしがらみに捕われる時間などもったいない。しがらみに捕われた者は、遅かれ早かれ消えゆく運命にある。
男は、変わり身という点ではなかなかどうしてやり手のはずだからね。さあ、そろそろあらたな環境をじっくり見回してみないかい?
椎名蘭太郎