先日、ついに友人と「目黒寄生虫館」に行ってきました。前々から一度行ってみたかったせいもあり、非常に興味深く、楽しんで見てまわることができました。が、翌日、会社で同僚の男の子に「昨日寄生虫館に行ったんだ」とチラッと話したら「ええっ!?山口さん虫好きなんですか?!こわっ」となんだか汚い物を見るような目でみられてしまいました。(当たり前かな・・)私は“虫が好き”なのではなく、“普段目で見れないもの”を見に行ったつもりだったのですが・・・(笑)。認識の違いですかね。「言った相手が悪かった」というのはまさにこのこと、という出来事でした。
以前、“テンプトゥーパーム(紹介予定派遣)”という制度で入ってきた女の子のことを書いた。<“テンプトゥーパーム”とは、派遣会社との雇用契約終了後に派遣先企業に職業紹介されることを前提として派遣で就業するシステム>
私が見る限り、うちの会社にいる数多い派遣社員の女の子の中で、彼女はピカイチだ。人に対する態度、礼儀作法、服装、どれをとっても完璧にこなしている。性格も明るくハキハキ、そしてサバサバ。きれいにまとめたショートカットが“男にこびない、できる女”というイメージを完璧にしている。
派遣馴れしすぎて「こんな仕事できっか」「この面倒な処理なんとかならないの?」などと、うだうだ文句をつけたり、何かあるとそれを逆手にとって屁理屈を並べ、その場から逃げることばかり考えている私とはなんだか大違いだ。
人は自分にない物を持っている人に強く惹かれることがある。そんなこんなで私と彼女はいつのまにかずいぶん仲良くなっていた。
ある時ロッカーで「疲れたねぇ」「なんか美味しい物が食べたいねー」なんて他愛ない話をしていた時、「あ、やまぐっちゃん、私来月でここ終了なの。仲良くしてくれてありがとう。でもその前にお食事の件、本当に一度実現させようよ」と言われた。
「あー、そう」なんて聞き逃しそうなほど、サラッとした言い方だった。
ゆくゆくは正社員で、という契約で入ってきた彼女。まだこの会社に入ってきてから半年も経っていない。だいたいのことは予想できたが、「どうして?」と聞いてみた。
「やっぱりね、うちの部、新しく正社員の男性をとるみたいなんですよ。それでやむなく、です。」
正直ビックリはしなかった。うちの会社ならいかにもありえそうなことだ。会社という小さな社会なんてある意味では無法地帯だ。「そんなこと許されるの?」ということもいつのまにか許されている、そんな場所だ。
全ての会社がそうだとは言いきれないが、所詮企業なんてところは働いている人間1人1人のことまで考えてはくれない。
「仕事ができないから」「社風に合わないから」はともかく、派遣に至っては「年がいきすぎてるから」「愛想がないから」「ブスだから」そんな裏理由で契約を切られることは多い。私はそういう例を沢山見てきた。それが実態だ。
ヒックリはしなかったが、むしょうに腹立たしくなった私は「そんなの契約違反じゃない?私だったらその場で会社くるのやめちゃう!こっちにはこっちの生活があるんだからさー。ひどい話しだよ」とまたしてもまくしたてた。
彼女は「私もそう思ったんだけどねー。自分に何か落ち度があったのか、不安にもなっちゃったし。最初にそう言ってよ、途中で条件変えないでよ、って頭にもきたし、言われたとたん辞めちゃおかな、と思ったけどね。でもこれって自然のなりゆきなのかな、って思ったの。子供じみた言い方だけどね、神様があなたにはもっと合う所があるよって言ってるのかな、って」と言っていた。
怖がりな私は社会に出て、ある時期から“与えられた仕事はきっちりこなす。でも会社そのものには決して執着しない”という自分なりの鉄則を作った。なぜそんな鉄則を作ったのだろう。たぶん、「必要とされない自分」を見るのが怖いからだ。彼女と同じような状態になった時「傷つく必要」をなくしたかったからだ、と思う。
でも、今回色々と話してみて、彼女はそのことを「鉄則」でもなんでもなく、「自然のなりゆき」としてしっかり理解できている人なのではないか、と思ったのだ。そしてそんな風に何があっても静かな心で受けとめることができるのは彼女の裏側にある「デキる女」だけが持つ“自信”でもあるような気がした。
凛としててカッコいいな。
でも、「ステキな人」「目標としたい人」というのは、どうしてこう次々といなくなってしまうのかなぁ。
2001.11.02