〔12〕やっぱり“派遣”で生きていく!

先週「テンプトゥーパーム」のことを書いた。その後もうちの会社のテンプトゥーパーム第一号の彼女は頑張って、バリバリやっている。通りすがりにこっそり盗み見ると、殆ど席もはずさず、率先して電話をとっている。

お盆期間中、「たまにはいいよな」と久し振りの“暇な時間”に酔いしれ、フラフラ別の部の友達のところに出向き、迷惑もかえりみず無駄話に花を咲かせていたような私とは大違いだ。同い年なのに、すごいなー。偉いなー。と関心してしまう。

先日また彼女とロッカーで一緒になった。「山口さんはもうここ長いんですよね?だったら正社員でとってもらうこともできるんじゃないですか?」と言われた。思わず「おっ、きたな」と思った。私は今の企業で1年半ほど続けているわけだが、周りの人に「正社員になれば?」と言われることがこのところ増えてきた。

確かに正社員は魅力だ。ボーナス、退職金、交通費(私が現在登録してる派遣会社は交通費の支給は無し)それだけとったとしても派遣に比べりゃ至れり尽せりだ。

ふっと心が傾く時もないわけではないが、私はやっぱり「派遣」でいたいと思う。

今の仕事は好きだ。面倒でバカバカしい処理なども多いが、1年半もやっていたらその面倒なこと自体が不思議と“いとおしく”なってしまった。人間関係してもそうだ。もちろん「やっかいなこと」はある。「とっつきにくい人」もいる。でも「どこに行ってもそんなもんだろう」と思うとそれが自然と“いとおしく”なることもある。

そんな風に感じているのに、私は正社員になることにとまどいを感じる。

不思議だが「いとおしい」と思えば思うほど「ここは私の居場所ではない」という思いも強くなっていくのだ。

私は派遣であることによって、今の会社の人間関係や仕事を一歩ひいたところで見ている。今までは“そのスタンスが心地いい”というだけだった。しかしその先を考えると、一定の距離をおき「ここは私の居場所ではない」と感じることによって、見えてくるものも沢山ある。それは派遣のメリットだと最近思うようになってきた。

「私なりに感じたことをぶつけ、もっと快適に仕事ができるように変えていきたい。」

そんな気持ちでいる間は私は敢えて、この“派遣としてのインスピレーション”を大切にしていきたいと思っている。

「やっぱり“派遣”で頑張ろう。」それが、優柔不断な私が久し振りに出した前向きな結論だ。さあ、明日も張り切って行こう。

2001.08.30

〔11〕正社員になりたい

このところ私はなんとなく不機嫌だ。というのも、私の周りで派遣として働いてる人の中に「契約途中での解雇」という事件が相次いで勃発しているからだ。9月の決算期に備えての経費削減か、はたまた長引く不況のせいか。。。

2~3年前までは「次はどんな仕事をしようかな」と夢をもって契約満了というかたちでやめて行く人が多かったのに対し、今ではそんなこと考える余裕などなく、「じゃ来月で」と言われ、急きょ企業から放り出されてしまう、というパターンが非常に多いような気がする。

しかも一回辞めてしまうと、2~3カ月は新しい仕事を見つけられないというのが現状で、次の就業先を早く決めたいがために、妥協に妥協を重ね、結局とんでもない会社と契約を結んでしまった、なんて話もよく耳にする。

正社員ですらいつリストラされるかわからない状況に置かれている今、派遣である私達がそれを考えない状況でのんびり働ける、というのはほぼ無いというのが現状かもしれない。何か身を守るすべはないのか、私達派遣をガッシリ守ってくれる法はないのか。

そんなことを考えていた時、うちの会社に1人の新しい派遣スタッフの女の子が入ってきた。部は違うが、ロッカーなどでたまたま顔を合わせているうちに、なんとなく色々な話をしあうようになった。

きくところによると彼女は“テンプトゥーパーム(紹介予定派遣)”という制度でうちの会社に入社してきたという。

“テンプトゥーパーム”とは「Temp-to-Perm」“臨時雇用(テンポラリー)から常用雇用(パーマネント)”の意味で、派遣会社との雇用契約終了後に派遣先企業に職業紹介されることを前提として派遣で就業するシステムだ。

派遣契約(派遣会社と企業側の取り決めによるが、6カ月が主流らしい)終了時に自分と受け入れ先の企業が合意すれば、そこで晴れて正社員の道がひらけるという、正社員を希望している人にとってはなかなか魅力的な制度だ。

テンプトゥーパームで入ってきたその女の子に「一般的な3カ月更新の派遣の場合とどう違う?」と質問してみた。

「やっぱり意気込みが違うかな。今までは“どうせ派遣なんだから”という意識が邪魔をしてた部分もあったけど、今は、ここで正社員になれるかもしれないんだからって思って、重要だと思うこともすすんでやってるんですよ。今までが今までだったので、ちょっとしんどいんですけど。」とテレながら言っていた。そしてその後、こんな風に付け加えた。

「“半年”という期限付きですから、それでこちらさんから断られちゃうかもしれないって怖さもありますけど、その間頑張って働いたってことにもまた意義があると思うから、たぶんその時はどっちにころんでも納得できるんじゃないかな、と思ってるんですよ」

そんな風に前向きに言えるのは、単に彼女特有の強さなのかもしれないが、なんとなく、すがすがしい気分になった。

派遣から正社員にと考えてらっしゃる方いたら、こういった制度を利用するのも1つの手かもしれない。

2001.08.23