先日会社で部内会議があった。私の雇用形態は派遣であるから、会議そのものに出ることは殆どといっていいほど無い。「今回は私にも関係することなのかな」と軽い気持ちで出席した。小さなノートと鉛筆のみをもって私は端の席に座っていた。
予定時間を5分ほどまわってから部長が席につき、開口一番「では、山口さんのいる間に、、、」と言って、仕事の振り分けの話しを始めた。それはこんな内容だった。(通常、内勤の事務処理は茂手木君と佐藤君という20代後半の男性と私の3人でまわしている)「茂手木と佐藤は夜遅くまで残業している。山口さんは定時に帰る日もあるわけだから、もう少しオマエ達の無駄な仕事を山口さんにふったらどうか」。
“それでいいよね”という顔で、部長はこちらをチラ見した。「は?」私は頭が一瞬真っ白になり、それ以降の部長の説明をうまく聞き取ることができなかった。
今私が派遣されている会社の事務処理内容の量はすごい。1人1台というパソコン環境が整っているにも関わらず、手書き処理をする内容がやたらめったら多いのだ。パソコンの中に社内独自のシステムがはいってきたことにより、二度手間になる部分が増え、手を煩わすことが多いのではないかと思えるほどだ。ちんたらやっていたら、確かに定時には終わるわけがない。
ただ、部長の言った中には大きく分けて2つの間違いがある。まず“無駄な仕事”の部分。仕事に“無駄”は存在するのだろうか。“無駄”であればそれは必要ないものだ。仕事ではないはずだと私は思う。
2つ目は“時間”。正社員と派遣スタッフの大きな違いの1つに給料形態がある。月給でもらえる場合と、時給でもらう場合、仕事に対する意識は必然的に変わってくる。派遣は時給で雇ってもらっているわけだから、就業時間内に何をするかに焦点が絞られる。時間が勝負なのだから、だらだらと遅くまで仕事をするのは先方の会社に失礼にあたるわけだ。
ま、そうは言っても、任せられた仕事を時間内に処理するのが、派遣、正社員問わず、社会に出て働く人間の基本なのではないだろうか。その上で、私は休憩もそこそこに手早く片付けるように工夫して、仕事に臨んでいるのだ。
佐藤君のように、営業の人達が出払った後うとうと眠って、定時を過ぎてから本腰を入れて仕事をしている人間とは違うのだ。私は派遣としてのプロ意識をもって仕事をしている。「時間に対する感覚」。これは正社員と派遣社員の決定的違いの1つだと思う。
そういった雇用形態の違いも、また仕事の内容の把握すらできず、“早く帰ること=業務が少ない=無駄な仕事を任せよう”という図式をつくり、挙句の果てに正式な会議で満足げに発表してしまうことのできる部長のカラッポ頭に、私は思わずあいた口が塞がらなかった。
ボーゼンとしている私の耳に部長の声が響いてきた。「じゃ、そういうことで。山口さんはもうでてっていいよ」。
—雇用形態が多様化している今、こういった仕事に対するやり方、時間に対する感覚、というのは一度見直しをする必要があるのだ、と今回のことをきっかけに痛切に感じました。この件にかんしては派遣会社を介し、きちんとケリをつけていこうと思ってるので、随時ご報告していければと思います。
2001.07.05