[38]昆虫たちの世界(南京虫)
第38回
■昆虫たちの世界(南京虫)
《南京虫》
「南京虫」って見たことありますか? 昔でも一般の家には恐らく居なかったと思いますが、商売をしている家には大抵居たものです。それは荷物にくっついて来るからです。
此の虫は小豆粒より少し小型で、色は茶色で、特徴は凄く平べったいので、隙間に入り込むんです。そして凄くすばしっこく逃げ足は速いです。
そして人を咬むと必ず咬んだ後の口が二つあるんです。一つは血を吸った口で、もう一つは毒を入れて行くんです。最初の頃これに咬まれた時は、パンパンに腫れあがり、化膿して手が付けられませんでした。凄い毒虫です。でも咬むところは外に出ている手とか足です。ですから夜寝るときは長いズボンを履いたり、袖の長いパジャマの様な物を着て、両足首と両手首に包帯をしっかり巻いて寝るんです。
此の虫は昼間は殆ど姿を見せません。夜、布団の下に新聞紙を敷いて寝ると、深夜になるとガサガサ音がするんです。パット電気を付けると「南京虫」が一連隊ほどの数が居るんです。そして一斉に逃げますが、枕の折り目とか、布団の折り目や畳の縁なんかに素早く逃げます。体が薄いですからこれを引っ張り出すのは針でつっいて出すより仕方がありませんが、とても量が多いのでそんなことではどうにもなりません。
こちらも両手で掴んで、揉み殺すのですが、こいつはもの凄く臭いんです。イヤな強い匂いが出るんです。此の「南京虫」除けの器具も売っていました。セルロイド製の3cm位のU字溝の長さ1mくらいのものです。これを繋いで布団の廻りを取り囲むように設置するんです。
すると「南京虫」は滑って入れないし、中に入れば出られないと云うアイデア商品でした。ところが「南京虫」はもっと頭が良く、そんな物は全く相手にしませんでした。「南京虫」はどうしたのでしょうか?なんと「南京虫」は柱を伝って天井に上がるんです。そして人間の寝ている所に落ちて来るんです。これじゃ防波堤も役には立ちませんね。
そして鱈腹血を吸った虫は、今度は防波堤を乗り越えることが出来ません。そこで電気を付けると一斉に隠れようとしますが、何しろ腹一杯血を吸っているわけですから、太ってしまって隙間に入り込む事が出来ません。
仕方がないので手で揉み殺しますが、臭いのと血で汚れますので閉口でした。しかし此の毒虫に毎日刺されていると、体に免疫力が出来るのか、暫く経つと咬まれても腫れなくなりますね。