[114]主人のために命を落とした名犬たち~シュワルツのお話~

2019年3月21日

第114回
■主人のために命を落とした名犬たち~シュワルツのお話~
此処に書いた事は「忠犬ハチ公」は亡くなった主人を渋谷駅で何年間も待ち続けたと云うお話でしたが、此処に記したことは筆者の記憶の中に存在するお話で、既に50年以上経っているので、こう云うお話もあったと云うことを書き留めて置きたいと思います。
《シュワルツのお話》
これはアメリカのお話です。アメリカの東海岸のある町に夫婦と子供二人の家庭がありました。その一家に家族同然に暮らしていた一匹のトイプードルの「シュワルツ」と云う犬がいました。此の犬は利口な犬で家族のお使いをしていたと云います。
首に小さな籠を付けて、そこにメモとお金を入れて、何を買って来い・・と云うと「シュワルツ」は買い物に行ったそうです。買い物の日課は朝になるとご主人のタバコを買いに行くのだそうです。ご主人が「シュワルツ」にタバコほ買って来てと云うと喜んで買って来ていたそうです。家の近所にそのタバコ屋はあったらしいのです。
ある時此の一家は西海岸に移転したのだそうです。元の住まいからは1000Kmも離れた所に引っ越ししたのです。
事件はそこで起きました。「シュワルツ」は勿論新しい家で喜んでいたと思います。ある朝ご主人が何気なく「シュワルツ」にタバコを買っておいで・・と云ってしまったのです。当然ご主人は近所のタバコ屋に行くであろう・・と思っていたらしいのですが「シュワルツ」は何時間経っても帰って来ませんでした。
それから家族で探し廻りました。新しい所に引っ越ししたので迷子になったか、或いは可愛いからと連れ去られたのか・・と家族は心配していましたが、幾日経っても帰って来ません。
そして1年の歳月が流れました。家族はすっかり諦めて居たのです。ところがある日の夜、戸の外で小さなクンクンと鳴く声がしたんです。ご主人が戸を開けてみると・・なんと痩せこけた見るからに汚い犬がいるではありませんか。ご主人はすぐに愛犬の「シュワルツ」であると分かりました。
ご主人と家族は仰天しましたが、息も絶え絶えの「シュワルツ」の口にはしっかりと主人に頼まれたタバコの殻をくわえていて、ご主人にそのタバコの殻を渡すと、尻尾を二三度振って息が絶えました。
主人に頼まれた事を元の住まいのタバコ屋に片道1000Km往復2000kmの距離を小さな躰で歩いて行ってきた「シュワルツ」のいじらしい行為にみんな涙を流して手厚く葬ったと云います。