[163]フランスの光と影

「隣の芝生は青い」とは良く言ったもんだ!と毎日暮らしながらそう思います。不完全燃焼なのは、客観的に自分を凝視出来ないことにあるのを分からずに虹の向こうばかり見てきたから。虹の向こうの憧れは、厳しい現実となり襲い掛かってくる。青かったはずの芝生は踏み込んだら同じ色だった。
日本へ帰る度にフランスファンに会う。フランスが大好きだと言う。フランスに住みたいと言う。フランスで働きたいとも。私もフランスファン、フランスが大好き、フランスに住んで働いている。でもここは海の向こうにいる人たちにブラウン管や誌面を通しただけでは伝えきれない物語がたくさんある。のんびりとした美しい田園風景の裏には都会の混沌とした情景があり、ワインで鼻を赤く染めた人の良いおじさんの笑顔と同じ土地に外国人を蔑視する人も暮らす。


私は観光業が本業だから紹介するのは専らフランスへの旅情を募らせる目的です。しかし、募ったものが旅情を超えた先の情報はどう伝えるか。私はフランスの光の部分を中心に伝えているけれど、同時に伝えなければいけないのは影の部分。EUが拡大されるに連れてこの国がどんどんアメリカ並に多国籍になって行く。その現実の中私たち外国人はアイデンティティー(主体性)をどう守り抜きそしてコスモポリタン(国際人)として他の人たちと共存して行かなければならないのか、またこちらへ来る前にその為の心理的な準備をどうすべきか、などなど伝えなければならない情報はたくさんあります。
海外で生活する上で私が重要だなと思う事に同胞との横の繋がりがあります。長い海外生活の中で周囲に同胞がいなかった苦しい時期を経験しているから余計にそう思うのですが。大文字のように横にも縦にも広いこのフランスに散在して在住する日本人はたくさんいます。皆さんがそれぞれの地で頑張ってらっしゃいます。とても頼もしい限りです。在仏日本人の発行するメルマガも多種多様にありそれぞれが個性豊かで面白いです。ブルターニュ在住の日本人女性がこの国が抱える問題を分かり易く紹介するメルマガを発行されることになりました。フランスの光を紹介するメルマガが大多数の中、あえて影の部分に視点を置く、画期的且つ重要なことだと思います。
緊急レポートゆれるフランス
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夢路とみこ