1960年代に東京では歌声喫茶と言うものが流行っていたようだ。それはみんなで歌詞カードを持ち、カチューシャやちょっとアナーキー風の歌を合唱し共に青春を謳歌したというべきでしょうか。私が日本を出る少し前にもそのブームが少し再来した様で西新宿あたりにそれがあったのを覚えています。
東京で聞くシャンソンは日本語訳だけどそれなりに艶っぽく、悲しげなピアノのメロディーを奏でられると誰しもがピアフに聞こえ、モンタンに聞こえたものです。さてパリより先の本当のフランスというとなると。ディジョンではつい最近になってそれらしきものを見かけるようになりました。私も只今ハマッている最中。ブルゴーニュ美食の好敵手であるリヨン美食のレストラン、シェ・レオンが月に1回、ソワレ・ミュージック音楽の夕べ)を始めたのはここ数ヶ月前のこと。
始まったばかりの数回は聞かせる音楽が戦前のものばかりだったので、客の大半が60代アッパーというもの。そんな中、ひとり戦争を知らない30代の日本人というのは目立つこと、目立つこと。歌手の方も私の事を異様に思ったらしく何度も「この歌はね、30年代に活躍した何とかかんとかでね、何とかかんとかについて歌っているんだよ。」と私のテーブルまで来て特別解説をしてくれる。その時代のフランスを知らない私はチンプンカンプンのままその歌声と雰囲気に魅了されて何度もその店に足を運びます。
シャンソンというものは悲哀をテーマにしたものが多いかと思いきや、脳天気に明るいものも多く、韻を踏んでいる歌詞が多いのでその気になって覚えたら歌えない事もないかも。シェ・レオンではいつも歌詞カードを配ってくれるので輪T氏もそれを目で追いながら口づさむ。
最近では戦後のシャンソン、70年代のセルジュ・ゲーンスブール(某有名バッグのバーキンは彼の奥さんだったジェーン・バーキンから来ているらしい)もやってくれるので客層が私の年代に近づいた。私も家でラジオに合わせ歌詞カードを見ながら練習しているのでシェ・レオンでみなに合わせて歌える曲も出て来た。私の歌声喫茶デビューはまだなさそうだけれど、これでひとつまたフランスの生活が楽しくなった。
シェ・レオン:20 Rue des Godrans 電話 03.80.50.01.07 日曜日休み
音楽がない日でも素敵な店なので是非行って見て下さい。
リヨン名物のピスタチオ入りハムやクネル(つみれ)が最高です。
夢路とみこ