気まぐれな同居人からいきなり退去勧告を受けてから毎日ネットと日本語の無料ペーパーを読み漁る毎日。めぼしい所を見つけては見学アポを取るもののタイミングが悪く他に取られたりはしょっちゅう。ムカついたのは、朝電話して昼過ぎに見学に出向くメトロ移動中に先方から電話があり、「今、他の人が契約したから」というものも。先約があるならそう言ってくれればいいのに、その人が決まらなかったら見学に行くのにと悔しい思いをしたことが何度も。
でも、数あるムカつく話の中でも一番カチンと来たのは、私しか見学者がいない物件と確認してたのに見学時間の30分前に電話があり「今他の人が見学して決まりました。でも他の物件ですぐ紹介出来る所がありますから」と言われその物件を聞くと、こちらが興味を示していた場所や料金とはまったくかけ離れたもの。こちらが焦って物件を探していることに付込んでいたとしか思えない話ぶり。その人が日本人であった事に更にむかつきました。
パリで住居を見つけるのは半端じゃない。周囲の人の苦労は何度も見ているし、入居が決まるまで大家さんとのバトルもあるし、退去するときのバトルに至っては裁判沙汰になったケースも知っている。ネットに掲載されている個人者による賃貸は悪質なものもあるようで、敷金だけ取ってとんずらしたとか、入居したら合鍵で空き巣にはいったとか。だから私が新居を探していると知った周囲は金額に無理があったとしても、不動産屋を経由したほうが無難だよ、と何度も忠告を受けました。
個人契約だったら不動産屋のように敷金、礼金で4か月分近くが請求されることはなく、大家によっては敷金1ヶ月の入居時の家賃のみというところもあります。しかし、滞在許可証や家賃補助に必要な書類を出してくれない人もいるので要注意。
個人の賃貸を頼って連絡がまともに取れたのは30件、うちかろうじて10件は見学まで至れました。でも、どれもこれも実際に見てみると条件に合わず、もうだめだ暫くユースホステルにでも住むかと思った矢先に見つけた今の自宅、レ・ゴブランのアパルトマンは屋根裏部屋。人生半分以上生きた中で一番狭いスペース。でも同僚が「Mieuxpetit chez soi que le grand des autres 広い他人の家よりも狭い我が家の方が幸せ」と新生活にはなむけの言葉を送ってくれました。
夢路とみこ
[286]同居から独立生活へ(3)
2軒目の同居先を出たとき、もう一人の同居人の女性は私の最初の同居人の家へ、私は異業種交流会で知り合った人の所へ。交流会で合っている時は楽しい人だな、ワインが好きという所は私と合うと前向きだったのですが、いざ、一緒に生活してみるとすごいことに。これってどっかの出会い系のパーティで知り合って、付き合い出し、一緒に暮らすようになったという流れに類似しますが、私達はそういう関係でない分、金銭関係で繋がっている分、その不満と驚きが頂点に達したとき、簡単に退去する事が決められる、後ろ髪を引くものは全く無かったです。
まず何事もマイペースの同居人は他人への配慮というのは全くなし。自分が「今こうしたい」と思ったらすぐ行動に起こす、先にそれを使用している人が終わるまで待つ、という感覚は全くなし。音楽が聞きたかったら夜中だろうがボリュームを上げたいだけあげ、喋りたい事があったら、聞いている私が半分転寝してても喋る。週末のパーティは午前様、週末に早朝出勤があった時は隣の部屋から漏れてくる光と騒音で全く眠れず。冷蔵庫に保管していた私の食材は「入れたいものがあったから、スペースないから捨てた」と平気で言ってのける。2月に肺炎で半分別世界に行きそうになったときも全くしらんふり。ドア越しに「元気」と覗き込むのみ、医者すら呼んでくれなかった。
でも私の堪忍袋の尾が切れたのは、外出中の私の部屋に入っては換気だと言い窓ガラスを開けっ放しにして外出してたり、気分しだいで家賃をいきなり上げてきたり。税申告をしてない彼は賃貸契約書はもちろんのこと、毎月の家賃の領収書すらもしつこく言わない限りだしてくれない。出しても「これを公の場所に持ってゆくなよ」と念押し。
私の不在中に部屋に勝手に入ってくるのは共同生活としてルール違反。家族だって入らないのが普通なのに、とクレームをつけたら「ここは僕の家だ!」の一点張り。私はお金を払って部屋を借りてるのよ、と反論しても帰ってくる言葉はオウム返しのような上記の台詞。住みだして1ヶ月後にはもう、口も聞きたくなくなり食事も自分の部屋でするように。
最終的には向こうの方から、家賃の値上げを一方的に通告して来た時のように、「同居は止めたからさっさと出て行ってくれ」と。
ここに住んで約半年、限界に達してきたので新居を探し、出てゆくときは夜逃げのように友人の助けを借りて退去。独立生活に入りました。
夢路とみこ