米系企業に就職してまだ3ヶ月というのにうちのボスは事ある毎に「君の給料は時給にするとXXユーロで、個人事務所を与え会社は投資しているんだから何か結果を出せ!」とせっつく。ここでボスの言う「結果」とはプラス結果を意味していて現状のマイナスとはと違う。前の会社はもろ欧州系で、もろフレンチだったから、大きくそしてのんびり構えていた。これが買収に繋がった事も無視できないが、それでも外国市場への新規奇参入に対する厳しさと難しさに対する理解はまだ、ちとあった方だったと今更ながら思う。米系は厳しい!
この厳しさを普段から痛感しているせいか、それとも単に私のやっかみか、私も対価に対する評価は厳しい方だ。お金払うのだからそれに見合うものが欲しいし、見合わなないのならボロクソ言う方。それを知る周囲の人は私の商品に対する選択を信用してくれるという有難い結果も招いている。
[136]夢は叶えるためにあるもの
突然解雇されてから4ヵ月後近く、労働許可証が切れる直前に滑り込みセーフで再就職にこじつけた。再就職先は前の会社のライバル船会社。紹介してくれたのは前の会社の副社長。船が好きでブルゴーニュが好きで、アル中でも船の沈没で死んでも良いからここで船の仕事がしたいと言うことを知っていた彼は、私から船を、ブルゴーニュを取り上げたらただの「おばちゃん」になってしまうことを危惧してくれたようだ。
解雇直後、「とみこはこれからどうするんだ。日本にはもう帰る場所ないんだろう?」と心配してくれた。そう、両親が他界して、持ち家を処分してスーツケース一つでディジョンに来た。ここで自分の人生を形成するつもりでやってきた。だから毎年帰国しても帰る家がないからホテル泊まり。日本は故郷であっても故郷でなくなりつつある。だから意地でもこのディジョンに居座らなければ。運河と葡萄畑が心の拠り所。
副社長がライバル会社に電話してくれた。「もう知っての通りうちの会社買収されてね、米国以外の市場には船を卸さないんだよ。でね、日本市場担当している者も解雇されたんだ。お宅は日本市場興味ないかね。」と。電話先の相手は再就職先のブルゴーニュ支社支社長のところ。この会社も実は米国資本の会社で本社はボストン近郊のプリモス。本社でマーケティングを行い、ブルゴーニュは船の運営のみ。ここも米国市場以外は全く手をつけていないというクルーズ業界お決まりの米国市場中心型。