[300]どっちが先

どこか観光地に行くときはまず、ネットでその場所の位置確認と何が見どころかを確認。雑誌やすでに言った人のお土産話もかなり参考になりますが、でも、一番役立つのは現地で売っている「現地案内ガイド」みたいなもの。これはたいていの有名な観光地であればその町の歴史や文化、郷土名産などについて触れていて簡単な冊子なら観光局に無料のものがあり、それを地図と一緒に片手にとって町を巡るのは楽しいし、勉強にもなる。

しかし、無料のそれは大まかな紹介であり、詳細は殆どなく。パスポートに訪れた国は50カ国とか、ただのフライトのトランジットで立ち寄った事を自慢するようなさらりとうわべを見るだけならこの程度で十分でしょう。しかし、訪れた町を印象深く、かつ、きちんと把握するならば、やっぱり有料の「現地案内ガイド」を購入することをお勧めします。たかが5ユーロ程度の本、カフェオレ一杯の料金とほぼ同じなのですから。

かつての船の仕事柄、フランス各地の観光名所を周りました。当時は船にいるガイドの通訳をしていたのでガイドが案内するとおりの説明をして、それぞれの観光地に何度も行っても同じ説明をオウム返しのようにしていました。だから、一通りの観光客の興味の対象になるようなことは知っているけど、それ以上のものはさっぱり。行った先々の現地で、このようなガイドブックを買い集め、クルーズ中にちらちらと読んでましたがそれはセーヌの流れと一緒にクルーズが終わるころにはどこかに流れてゆきました、残念。

最近、異業種交流会でブルゴーニュ地方への週末観光ツアーを組んで出かけることが多く、現地案内役を私が買って出ているのですが、必要に迫られて、給料もでない、仕事でもないのに、かつて買い集めた「現地案内ガイド」を読み漁っています。するとどうでしょう、それまで分からなかった100年戦争の根拠やジャンヌ・ダルクを英国側に売り払ったのがなぜブルゴーニュ大公だったのか、どうしてジャンヌはルーアンで処刑だったのか、判りました。

ジャンヌの200年後の名誉回復、聖女認定に続いて、ブルゴーニュはモルヴァン山脈の中のアレジア平野にロレーヌ地方出身の彼女の銅像がある理由が私の中で明らかに。カフェオレ一杯の料金で豊富な知識を得れた。やっぱり読んでから訪ねるか、訪ねてから読むか、いずれにせよ、「現地案内ガイド」を読めば読むほどその土地に愛着が沸いてきます。

夢路とみこ

[294]マドレーヌ教会食堂

メトロのマドレーヌ駅周辺と言えば誰でも知っている高級ブティークがぐるりとマドレーヌ教会を囲むように並んでいます。そこにはアップルティーのフォーション、フルーツパテのエディアール、トリュフならメゾン・ド・トリュフ、バカラやサンルイなどのクリスタルのお店もあります。目の保養と日本へのお土産探しにちょこちょこと歩く場所ですが。最近ここに「マドレーヌ教会食堂」があることを知りました。

これは一体何なんでしょう、これはマドレーヌ教会が運営している「食堂」なんです、ホントに。通常教会の地下は「クリプト」と呼ばれる地下祭室で教会に縁のある王家の人や貴族のお墓、教会のお宝、つまり宗教儀式に使われる贅沢な祭儀用具があったりするんですが、ここの教会の下には「食堂」がある。もちろん同じ地下の別の場所に「クリプト」もあるとは思いますが、でも、「食堂」を持っている教会は、「寺町パリ」でもここ位なのではないでしょうか。

この食堂については「知っている人は知っている」という場所でここに来る人は殆ど口コミのようです。特に宣伝もしていないようですし、教会に行ったからといってすぐに分かる場所でもありません。私も人からそれを聞き、入り口を探すのに教会の側面をぐるりと一周してやっと見つけたくらいの「こんな所にあった」という場所にあったくらいですから。これについてはこちらのサイトで詳細をご紹介していますのでよかったらご参考に。
http://blogs.yahoo.co.jp/beaucaillou7/44889152.html

日本には宿坊という施設があってお寺に宿泊して禅の修業をちょっぴり体験したり、精進料理を味わえたり出来てそれが外国からの観光客に人気があるようですが。でも、それは日本の仏教文化を知る事が主旨のようで、あまりこちらのように教会の維持費を自分達で工面するための食堂経営とはちょっと違うようですが。

でも、ヨーロッパの教会は面白い。ビール造ったり、ワイン作ったり、フランスの有名な焼き菓子マカロンはナンシーにある修道院で焼かれたのが始まり、パリで食べるマカロンとはまったく別物の、まるで関西のカルメラ焼きのような素朴な味のお菓子ですが、自給自足という観念の元このような行為を起こすフランスの教会社会の中に、なんで人に頼ってばかりの「物乞い」の人がメトロの中をうろうろするんでしょうね。さっぱり分かりません。

夢路とみこ