[136]夢は叶えるためにあるもの

突然解雇されてから4ヵ月後近く、労働許可証が切れる直前に滑り込みセーフで再就職にこじつけた。再就職先は前の会社のライバル船会社。紹介してくれたのは前の会社の副社長。船が好きでブルゴーニュが好きで、アル中でも船の沈没で死んでも良いからここで船の仕事がしたいと言うことを知っていた彼は、私から船を、ブルゴーニュを取り上げたらただの「おばちゃん」になってしまうことを危惧してくれたようだ。
解雇直後、「とみこはこれからどうするんだ。日本にはもう帰る場所ないんだろう?」と心配してくれた。そう、両親が他界して、持ち家を処分してスーツケース一つでディジョンに来た。ここで自分の人生を形成するつもりでやってきた。だから毎年帰国しても帰る家がないからホテル泊まり。日本は故郷であっても故郷でなくなりつつある。だから意地でもこのディジョンに居座らなければ。運河と葡萄畑が心の拠り所。
副社長がライバル会社に電話してくれた。「もう知っての通りうちの会社買収されてね、米国以外の市場には船を卸さないんだよ。でね、日本市場担当している者も解雇されたんだ。お宅は日本市場興味ないかね。」と。電話先の相手は再就職先のブルゴーニュ支社支社長のところ。この会社も実は米国資本の会社で本社はボストン近郊のプリモス。本社でマーケティングを行い、ブルゴーニュは船の運営のみ。ここも米国市場以外は全く手をつけていないというクルーズ業界お決まりの米国市場中心型。

“[136]夢は叶えるためにあるもの” の続きを読む

[135]パリの運河クルーズ

私は運河クルーズが大好き。運河は潮流がないので船に乗っても静かに漂うように進むから。座っているだけで景色が動いてくれるから。ワイングラスを片手に観光が出来るから。運河は幅が狭いので横を別の船が通っても殆ど揺れないから。沈没しそうになったらデッキからすぐに陸上に飛び乗れるから。運河沿いにはサイクリングロードがあって自転車でも徒歩でも船に並んで進めるから、と運河クルーズの魅力を語りだしたらワインについて語るのと同じで話が尽きません。
パリはどんな風に観光手段を選んでも楽しい。オープンエアの2階建てバスも良い。市内循環バスも捨てたもんじゃない。狭いモンマルトルの路地を「そこどけ、そこどけ」というように疾走するプチトランだって気に入っている。セーヌ川にまるで東名高速道路のような渋滞を招いているバトームーシュやバトータクシーだってパリをあらゆる角度から見せてくれる。でも、そんな中でもやっぱり私のお気に入り観光手段はサン・マルタン運河のクルーズ。

“[135]パリの運河クルーズ” の続きを読む