[288]新居獲得奮闘気(2)

新居が決まりお引越しをしたのは午前中の仕事が終わってからの夕方に。友人達に引越しのお手伝いをお願いしたものの皆さん都合が悪く来てくれたのは、最初の同居人と女性友達となんと大家さん。元同居人は体調が悪いので車で荷物の移動のみ。入り口からお部屋までの移動は私達二人ともう初老でスケルトンのように痩せている大家さん。エレベーターがあるから殆どの荷物はそれ程苦労せずに運べたのですが、最後のそして私の最大の宝であるロッキングチェア?がエレベーターに入らない。
エレベーターそのものが小さい事にも原因はあったのですが。それに気づかず6階の部屋でチェア?が来るのを待っていたら、螺旋階段の下から荒い息が聞こえるではないですか。慌てて降りてゆくと、そこには4階までロッキングチェア?を担いでくれた友人が、それも彼女はハイヒールを穿いていて。エレベーターに入らなかったことをその時しり、今度はスケルトンの大家さんがそれを担ぎ出し6階の玄関まで。
玄関に着いたら、今度は玄関にある本棚が邪魔してロッキング・チェア?様が入れない。ひぇ?見学に来たときにこの入り口の狭さ気づかなかった、エレベーターの件もそうだけど。そしたらハイヒールの彼女とスケルトンの大家さんが二人してこの本棚を動かしだした。二人は足が悪い私を気遣ってくれて手伝わないで良いからと言うものの、二人が怪我したらどうしようと見ていてハラハラ。
お引越し開始から4時間後、荷物は全部入り大家さんも帰り、ハイヒールの彼女と二人で引越し祝いに。でも、大家さん側の都合で引越しした日から数日間入居できず近くのホテルに宿泊。偶然なことにそのホテルは数年前にパリで開催されたインテリアの見本市に私が通訳として派遣された際に私のクライアントが泊まったホテルだったのです。ホテルの玄関に入ってそれに気づき、また、ホテル宿泊中の数日間、食事をしたブラッスリーはその当時お客さんとほぼ毎晩のように食事をし、お酒を楽しんだ店でした。全くの偶然。レ・ゴブランに移ったこと、最後の最後になって希望の条件に近いところに決まったこと何か運命的なものを感じています。
私の部屋からは道路を挟んだ御向かいの住宅が良く見え、それはまるでウッディ・アレンの映画の一幕のよう。メトロは7番線一本のみですが、バスは充実していてパリの主要な場所には殆どバスで行けるというこの便利さ。今後が楽しみです。

夢路とみこ

[287]新居獲得奮闘気(1)

気まぐれな同居人からいきなり退去勧告を受けてから毎日ネットと日本語の無料ペーパーを読み漁る毎日。めぼしい所を見つけては見学アポを取るもののタイミングが悪く他に取られたりはしょっちゅう。ムカついたのは、朝電話して昼過ぎに見学に出向くメトロ移動中に先方から電話があり、「今、他の人が契約したから」というものも。先約があるならそう言ってくれればいいのに、その人が決まらなかったら見学に行くのにと悔しい思いをしたことが何度も。
でも、数あるムカつく話の中でも一番カチンと来たのは、私しか見学者がいない物件と確認してたのに見学時間の30分前に電話があり「今他の人が見学して決まりました。でも他の物件ですぐ紹介出来る所がありますから」と言われその物件を聞くと、こちらが興味を示していた場所や料金とはまったくかけ離れたもの。こちらが焦って物件を探していることに付込んでいたとしか思えない話ぶり。その人が日本人であった事に更にむかつきました。
パリで住居を見つけるのは半端じゃない。周囲の人の苦労は何度も見ているし、入居が決まるまで大家さんとのバトルもあるし、退去するときのバトルに至っては裁判沙汰になったケースも知っている。ネットに掲載されている個人者による賃貸は悪質なものもあるようで、敷金だけ取ってとんずらしたとか、入居したら合鍵で空き巣にはいったとか。だから私が新居を探していると知った周囲は金額に無理があったとしても、不動産屋を経由したほうが無難だよ、と何度も忠告を受けました。
個人契約だったら不動産屋のように敷金、礼金で4か月分近くが請求されることはなく、大家によっては敷金1ヶ月の入居時の家賃のみというところもあります。しかし、滞在許可証や家賃補助に必要な書類を出してくれない人もいるので要注意。
個人の賃貸を頼って連絡がまともに取れたのは30件、うちかろうじて10件は見学まで至れました。でも、どれもこれも実際に見てみると条件に合わず、もうだめだ暫くユースホステルにでも住むかと思った矢先に見つけた今の自宅、レ・ゴブランのアパルトマンは屋根裏部屋。人生半分以上生きた中で一番狭いスペース。でも同僚が「Mieuxpetit chez soi que le grand des autres 広い他人の家よりも狭い我が家の方が幸せ」と新生活にはなむけの言葉を送ってくれました。
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