先日いつも手配している12区のシャンブル・ドット、シャナ夫妻のお宅に伺ったら、テーブルの上に折り紙で作った手毬が置いてあり、どうしてそれがあるのかを聞いたら最近宿泊したアメリカからの日本人家族がご夫妻への感謝の気持ちを込めて折ってくれたらしい。すばらしいチップ(感謝の気持ち)だと思いました。
シャンブル・ドットの場合、ホテルと違いチップという訳には行かないので、大抵の人は日本から民芸品や装飾品、葉書などを持参してくれているようですが、こうやってその場で折り紙などを折ってあげるのも嬉しい案だと思います。
こちらのマダム・シャナもそうですが、お料理好きはテーブルコーティネートも上手い。市販のリネンやキッチン用具を自分風にアレンジしてテーブルを飾るところは、さすが芸術の国フランスを感じさせる。このエスプリはどこから来るんだろうか、天然ものなんだもの。そのコーディネートに折り紙で作ったお花や動物があると更に楽しいと思いませんか。
私の周囲には日本へ赴任したご主人に伴った人が結構いて、彼女達は日本赴任中殆どの時間を「お稽古事」に費やしていて「生け花」「茶道」「折り紙」に関しては日本人並にすごい人がいます。お稽古事に「和食」がないのはやはり帰国した後の食材探しが難しいのと、「和食」が必ずしも皆さんの舌に合うとは限らないからでしょうか。シャナ夫妻なんてこれだけ日本人が多く宿泊していても、やっぱりムッシュは和食や和菓子は全くダメ。フランスの物以外はなかなか受け付けないとご自身も言っている位ですから。それは在仏日本人も同じ事で、一食は和食にしないと元気が出ない人もいますしね。雑食の私とは違う。
折り紙、折れたら素晴らしいと思います。殆ど道具を必要としない身軽にどこでも持ってゆけて披露できる日本の文化。そしてそれはテーブル・コーディネートやグリーティングカードに貼り付けたりして実用的でもあるから尚よろしい。パリ11区にあるエスパス・ジャポンでは定期的に「折り紙教室」を開催していて親子で学びに来る人も多いけど、一人で参加する外国人もいます。この前、参加して、あまりの不器用さに隣に座ったフランス人が面倒見てくれました。気軽に参加できるので、それを心づけとしてチップに添えて差し上げると喜ばれるのではないでしょうか。
エスパス・ジャポン
http://www.espacejapon.com/
夢路とみこ
[273]パリで知る日本(1)
パリには幾つか日仏文化協会があり、それぞれが独自のスタイルで様々なイベントを以って日本文化を紹介しています。そこには常に日仏の逐次通訳があり名通訳者なんかいて大変勉強になります。私のいう名通訳者というのはユーモアに溢れ、実用的でもあり豊かな表現をされる方のことです。
15区ケ・ブランリーにあるパリ日本文化会館で開催された「味噌」をテーマにしたセミナーに参加。味噌について色々と学んだのも確かなんですが、面白いと思ったのは、その調理法。パリでは和食の食材は簡単に揃うけど高い、私達はお酒でもみりんでも買えば使うけど周囲の外国人はこれを買ってもその料理をするときのみなので宝の持ち腐れ。お酒やみりんがないと和食は作れないと思っていた私にこのセミナーではこれらの代替品にワインを使うことを提案。
お酒の代りにロワールのミュスカデ・シュル・リーをみりんの代りに南仏のヴニーズ・レ・ボームをと聞いたときに大きく頷いたのは私だけではなく、和食の知識を持っている他の外国人の聴講者もいた。確かに、これなら和食の作り方を説明するときに分りやすいし、また実用的。これらのワインなら料理の後、飲んだり他の料理にも使えるから無駄がない。そしてこれらのワインならお酒やみりんの半額で買える。
また味噌についての解説以外には味噌を使った料理を何品かプロの料理人が作ってくれたのですが、ここでまたびっくり。その一品の中にあった豚汁。なんと隠し味に七味やしょうがが入るではないか。そしてマッシュルームも。パリのなんちゃってお寿司屋でお味噌汁に乾燥マッシュルームがはいっているのはこのせい?それともマツタケのつもり?いずれにせよ、香辛料が効いた辛い食べ物はワインに合わない理由からフランス人はあまり辛いものを好まないけど、ここで使われた七味は風味を掻き立て、しょうがは身体を温め、そしてマッシュルームは更なる出汁を出していて、美味極まりない。
通訳は料理研究家の方のようでしたが、フランスの食文化を良く熟知しているせいか、たとえや代替品の提案の仕方が上手い。和食を全く知らない人でも「私にも作れるかもしれない」という気にさせる通訳ぶりだと思いました。私はこの会場で見た和包丁一式をみて、「あれがあったら私にも作れるかもしれない」という気になりました。
パリ日本文化会館
http://www.mcjp.asso.fr/index.html
夢路とみこ