[253]出る釘は打たれる

この言葉、日本にいたとき良く聞いたし、言われた。個人プレーよりも団体行動を重視する日本のあり方にへきへきした時期もあり渡米の原因の一つに。皆と違わなければならない、違うことに利点を見出してもらうためにさらに目立つような行動をしなければならない、それは私がアメリカ滞在中に学んだことのひとつ。
でも、ここフランスでは、特に会社社会ではアメリカ的な個人プレーは嫌がられ、日本のような団体の輪、協調性、同調が多く求められていてなんとなく日本に似ているような気がします。もちろんこれは私の個人的な見解でフランス全体がそうであるとは言い難いのですが。
知り合いのアジア系フランス人女性が最近突然解雇された。突然の解雇というよりも試用期間が終わり本契約にならないままに打ち切られたというものですが。入社当時は海外でのキャリアとアジア系言語を含む三ヶ国語が変われて重宝されていた彼女ですが、ある日女性上司のヘビースモーキングが気になり、それもオフィスで喫煙なので、外で呑んで貰えないかと促してみたところそれが女性上司の癪に触ったらしく、突然態度が豹変したとか。
それまでは彼女をチームの一人として温かく指導していた上司が、その事以来冷たくなり、仕事をどんどんはずして行くようになったらしい。そして社内の喫煙女性社員だけで集まって外で喫煙するようになったけど、この彼女の存在は皆で無視するようになったとか。彼女のある意味では「余計な一言」があるまでは、社内の女性社員同士みんなで温かく接してくれていたのに、と彼女はつぶやくように語ってくれました。
あれ?こんな話、日本でもよく聞くような「村八分」的な行為。フランスはまだまだ喫煙者が多く、女性のヘビースモーカーなんて日本やアメリカでは想像もつかないくらいの数。フランス女性が細いのはこのおタバコの呑み過ぎというのもあるようですが。
しかし、この嫉妬による追い出し作戦、聞いていていや?まるで日本みたいと思ったのですが。フランスは個人主義と言いながらも、全体主義なところはきちんとある。「密告」がフランスの犯罪検挙率に貢献しているとフランス人から聞いたけど、なんとなく頷ける話ですよね。
出る釘は打たれるのが日本やフランス、出ない釘は無視されるのがアメリカ、私は毎日、日、仏、米を相手に仕事をしているので打たれないように避けながら、無視されないように適度に目立ちながらやっています。
夢路とみこ
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