コルシカに並んで独立意欲旺盛なブルターニュ地方の中でも特にその意識が高いのがこのカンペールだそうです。その所為でしょうか、町中になる標識や通りの名前は仏語とブルトン語の2ヶ国語表記。フランスにいながら一種の異国情緒が味わえるのはこれが公用語で私立の語学学校でもこれが学べる位に日常化しているせいかしら。
カンペールの市内地図は観光局にありますが有料の1ユーロ、ホテルなら無料。町中をオデッセイ川が流れたくさんの橋があり景観がとてもロマンチック。この町を知るならば2泊3日を提案。到着した当日はひたすら町中を歩くこと。市内地図で黄色くなっている通りは観光地らしい場所で昔ながらの家屋やお土産店が並んでいて「見るだけ買い物」でも楽しいところ。
ブルターニュは雨と風の都。だからここはフランスのアイルランドと呼ばれる位に緑が美しい。でも雨風を想定しての旅支度が必須。雨の中の散歩も楽しいけれど寒くなったらサン・コランタン大聖堂見学にどうぞ。古くからカトリックが根ざし、宗教建築物の数と豪華さに関すれば総本山のバチカンをも凌ぐ様なフランスの大聖堂一群。教会なんて皆同じと言わずに是非立ち寄ってみて。
[103]オヤジカフェに文化あり
フランスはカフェ文化と言われるほどにカフェが多くそれはフランスの知的文化の源であり大衆文化の泉のような気もします。パリや南仏ではカフェそのものが外観となり美しい光景をかもし出します。私も都会のカフェでインテリぶってカフェノワゼット(エスプレッソのクリーム入り)をシックに飲むのが好きですが、それは表参道や南青山でも出来ること。フランスでカフェ文化の大衆臭さを満喫するならやっぱり地方のオヤジカフェに行くことを薦めたい。満喫は遠慮でもやっぱり一見の価値はあるので是非旅行中に一回は立ち寄ってみてください。
パリや南仏のお洒落なカフェと一線を画しオヤジカフェは東京の有楽町ガード下、私の魂の癒し何処、新宿西口思い出横丁にも通ずるものがあります。そこにはハンチング帽のようなベレー帽を被ったオヤジが鼻の頭を真っ赤にしてワインやビールをすすっています。あっぱれ仏大衆文化を守るオヤジ、朝からでもワイン!ダイエット大流行で最近の若者は私たちがイメージする程にワインを飲みません。またワインに対する知識も思い入れも外国人の方がすごいような印象すらあります。外国人に乗っ取られそうなワイン文化をオヤジカフェのオヤジ達はひたすら守るかのようにワインを飲む。きっとオヤジは哺乳瓶の頃からワインの味を知っているのでしょう。
オヤジカフェでは入り口付近のカウンターに屯してくだを巻いているから入り難い雰囲気がありますが、朝や日中なら勇気を振起して是非入ってみて下さい。朝は近所のパン屋からの焼きたてのクロワッサンやパン・オウ・ショコラがあるのでカフェ・クレーム(カフェ・オレの事)と一緒にどうぞ。ホテルの朝食よりも安い。出勤前のオヤジがコーヒーを引っ掛けていたり、定年か失業かの常連オヤジは地元紙を読みながらワインを片手によもや話をする。ランチタイムなら近くのOLが安くて美味しい定食を食べに来たりもする。フランス語が分からなくてもオヤジ達の「この世の春」的な明るく手振りが大げさなおしゃべりは聞いていて楽しいもの。またオヤジカフェは常連で成り立っているようなものだから郷土名物ドリンク、ディジョンならキール、南仏ならパスティス、ノルマンディーならカルヴァドスが安くて美味しいこと。日本でもそう、常連の多い居酒屋こそ銘酒と珍味に出会える場所。B級でもC級でもない独立したオヤジグルメ。私はここにフランス大衆文化の底力を観ます。
夢路とみこ