[106]つみれ、はんぺん?

リヨンを代表する郷土料理のひとつにクネルがあります。これはブロシェットと呼ばれる川カマスのすり身に小麦粉や卵白を混ぜて蒸したものです。それをナンチュアソースと呼ばれる甲殻類、つまり海老とか貝などの出汁で作ったオレンジ色のソースを掛けて食べます。ガイドブックではこのクネルを紹介するのに「つみれ」という表現を良くします。クネルファンとしてはこれに異議申し立てしたい。だって日本で食べるつみれはもっと弾力性があるし魚臭い。日本の鰯のつみれは軽めの赤ワインに良く合うが、リヨンのクネルは白、それもコート・デュ・ローヌかマコンの方が絶対にしっくり行くと思う。
クネルにはヴォライユというものもありこちらは家禽、つまり鶏肉が混ざっています。フランスの鶏肉のトップクラスを行くブレス鶏はブルゴーニュ産だけど地理的にはリヨンの方が近い。さすがに高級レストランに行かないとブレス鶏のヴォライユで作るクネルは出してませんが、ブッションなら普通の家禽のものがあります。こちらはフォレスティエール、(森風、つまりキノコソース)で頂きますが、こちらもなかなか美味しいです。

この料理はグラタン皿に大きく2本並んで出てきます。見るとかなり大きいので食べきれなさそうと思いますが、中はふわふわ殆ど空気かなと思うぐらいに軽いのでペロリと行ける。店によってはソーセージのようにちょっと硬めに見えるものもありますがそれでもやっぱりふんわりしています。リヨンは豚が特産らしくハム、ソーセージ系が多いところです。ソシソン・リヨネーズ(リヨン風ソーセージ)と言えばピスタチオが入っていてこれがまたコート・ド・リヨネーズというリヨン近郊で作られるワインに良く合う。豚足やモツ料理もお盛んですが、日本のそれとはかなりお味が違うので私にはイマイチですが。
クネルは料理以外にもチョコレート菓子としてもリヨン銘菓になっています。チョコレートはあまり好きでない私でもこれは食べます。つまりそれだけ美味しいということです。リヨンでお土産に迷ったらこれをお勧めします。特にVoisin社のクネルと姉妹品のクッションは美味しいだけでなく見た目も可愛い。これはパール・デューの駅構内でも、市内のお菓子屋さんでも買えます。これをもらってがっくりする人はいないでしょう。
クネルを食べるならこの2件:
Restaurant de Fourviere フルヴィエール聖堂のそば
住所:9,pl. de Fourviere
電話:04.78.25.21.15
Le Beaujolais  ブッションが立ち並ぶレストラン街の一軒
住所:31 rue Merciere 690002 Lyon
電話:04.78.42.28.50

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[105]レジスタンス資料館

1941年のドイツ軍に夜パリ占領を境に本格化したレジスタンス活動の中心地はリヨンであったということはとても興味深いところです。すぐ近くにはドイツ軍に協力して独立政権を持ったヴィッシーがあり、またもう一方にはアルプス山脈を経て中立国家スイスがある、そんな立地条件の中、リヨンが中心となったのは偶然ではないような気がします。
1987年から88年にかけて私が留学していたオート・サヴォアの大学はスイスの国境まで徒歩15分ぐらいのところにあります。リヨンまでは電車でほんの 2時間足らずのところです。この学校はプロテスタント系の神学校が基盤となって出来た大学なので第一次、第二次世界大戦時とそれぞれ反戦活動に参加した学生たちの歴史がなまなましくありました。
第一次のときは神学部の教授であり牧師が徴兵を拒否し大学の地下牢にされていたケースがあり、第二次世界大戦の際にはその息子である神学部の学生がレジスタンス活動に参加しキャンパス裏のサレーヴ山を経て多くのユダヤ人児童をスイスへと越境させたこととか。この話は米国で取り上げられ60年代に Hiding Place(隠れ屋)として出版、映画化されました。私はこの本を留学中に読み先輩である彼らが越境した山をよく散歩したものです。

占領時代、レジスタンス活動を取り上げる歴史資料館はフランスの各地にあります。以前もブザンソンのそれを紹介したことがありますし、また私の母校の隣町、アヌシーにもあります。パリ、モンパルナス駅の上にもある事をご存知でしょうか?でもその大半がレジスタンス活動の中心的役割をした男性活動家に脚光を浴びさせる内容が中心ですが、リヨンのそれはちょっと違う。終戦の舞台裏の立役者、無名のヒロイン、女性レジスタンス活動家のことも、紹介しています。数え切れない数の女性の命も、また悲しい歴史の下敷きになっていることをこの資料館は教えてくれます。
彼女たちがいかに多くの子供たちを越境させたか、どのような肉体的拷問や精神的な苦痛や羞恥の末に朽ちて果てたかなどを知るとき、今日、会社社会の中でキャリアウーマンを目指し男性と同様の権利や責任を求め女性の社会進出も華々しい恵まれた時代に生きる自分の姿と比べます。そして、名誉でも偽善的な慈愛でもなくひたすら頑張った彼女たちの中に真のキャリアウーマンの像を見ます。見知らぬ先輩たち有難う。
レジスタンス資料館
Centre D’Histoire de la Resistence et de la Deporation
住所 14, avenue Berthelot Lyon 7
電話 04-72-73-33-54
日曜日から水曜日まで9a.m.から5:30 p.m.
トラムT2出Centre Berthelot下車Centre BerthelotのBatiment Fの中にあります。

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