私の仕事は二つ、滞在型観光船である弊社の船、ホテル・バージ旅行の市場開発と販売を含めたマーケティングそして日本から団体乗船客があるときにコーディネーターとして船に乗船しこまごまとした仕事をする事。弊社には日本人私一人しかいないからとりあえずは二束のわらじで仕事をしていますが、船に乗るとそのわらじが3足にも4足にも増えます。
船でのお仕事。朝6時起床。お粥作りで朝が始まります。欧米風朝食ビュッフェに日本のお粥は箸休めになると好評。船のクルーたちも時々相伴しています。それも牛乳と砂糖を入れて甘くして。
お客様が観光に出かけるのは午前か午後のどちらか、残りの半分はクルーズ時間。ワイナリー見学時の通訳以外は添乗員さんが通訳されるので私はお留守番。その間に食事のメニューや明日の予定表の翻訳と配布の準備。メニューの翻訳は食いしん坊の私の腕の見せ所。シェフが頑張って美味しいものを作るのですから、それに相応しい日本語でお客様の食欲をそそらねば。
[098]労働許可証への道(1)
ディジョンに来て駆け足3年半。やっと最近になって正式な労働許可証が下りた。それを手にした時、あまりの感動とこれまでの道程を思い出して思わず目がうるうるしてしまった。海外就職するのはこれで3回目。でも許可証入手でこれほど感慨深かったのは初めてです。
そもそも私がこのディジョンのクルーズ会社で働くきっかけになってのはインターンシップという企業研修プログラムです。米仏と2つの大学に留学しスイス、香港と2カ国で就職したけれど、でもインターンシップを利用しなければ再び海外就職にありつけなかった理由はただ一つ海外は「プロフェッショナル」しか雇わないということ。つまり希望職の経験があることはもとより、外国人を雇うだけの価値(つまり会社に収益をもたらせる)がないとはなから相手にもしてくれません。
今回の就職口にはどうしても古巣である金融業界は避けたかったので未経験の業種に入るにはもうインターンしかなかった。これなら企業研修だからなんとかなったのです。
30代も半ばに入り派遣の仕事に限界と将来の不安を覚え、以前から興味あったワインの世界を求めインターンに参加。希望職種、特になし、希望派遣地、ワインが飲めるとこと大の大人が馬鹿丸出しで面接にそう答え登録から半年後銘醸ワインの産地ブルゴーニュに到着。来て驚異だったのはうちの会長と社長の大胆さ。
祖国イギリスで大手情報会社の記者を経てバージ(船生活者)となりネローボートと呼ばれる細長い船でイギリス運河を巡っていた会長は、それを案に1996 年これをホテルバージ(滞在型観光船)の会社を興しフランスへ乗り込んできた。パリの大手雑誌社で社会派記者をしていたうちの社長、記者時代に知り合った会長の新事業にクルーとして入社。バスドライバーや船長の仕事を経て社長へ。
うちの副社長の船好きもこの二人に負けていない。ディジョン運河公園に自分の船を碇泊し、そこの家族4人で住んでいる。ヴァカンスはもちろん家であるその船でお出かけ。幹部の一人も20年来の船舶業界と船好きがこうじて最近自宅用の船を購入し運河公園へお引越し。運河公園の一部は弊社の船で占めています。
クルーの多くも船を所有している人が多い。私もこの会社に派遣されてすぐに船の虜になりました。船旅が好きだから多少の問題点もなんとか乗り越えられるのです。でもうちの社長は無類の電車好き。日本へ行くと必ず新幹線に乗りたがる。かなり感動したらしい。
夢路とみこ