[101a]遊女
遊女とは女郎のこと。平たく言えば売春婦なのですが、春を売るのも芸のうちといえるほどの芸達者。安易に売春婦とか娼婦とか呼べるものではありません。格調が高いのです。
江戸時代は遊郭が盛んで、お上公認の女郎屋が繁盛していました。女郎屋の経営者は「親方」と呼ばれ、普通7、8人、多くて20人くらいの女郎を抱えていたようです。
女郎の中でも最高位に位置するのが「太夫(たゆう)」といわれる女郎。次が「天神(てんじん)」、「鹿子位(かこい)」と続きます。このクラスになると芸達者も並みではありません。琴、三味線はもちろん、義太夫節や、長唄、小唄、日舞なども軽くこなしてしまいます。
そのほか茶の湯や生け花、和歌、俳諧、将棋や囲碁にも強いという。その上、床上手とくれば、まさに男を喜ばすプロといっていいでしょう。当然、客も金持ちの旦那衆しかとりません。
太夫クラスだと送迎も色籠といって豪華な籠に「禿(かむろ)」という10歳くらいの少女が付き人としてつきます。少女は当然「未通女(おぼこ)」ですが、姉女郎の日常の世話や客の接待、床の用意などを通じて将来自分の仕事になるノウハウをそこで学ぶのです。
一見(いちげん)の客や貧乏人はこのような太夫とは遊べません。端女郎という下のクラスの女郎で我慢するのが普通。いつかは太夫と遊ぶぞ、というのが男どもの合言葉であり、それがために仕事にいそしんだ殿方も多かったことでしょう。端女郎といっても並みの芸者よりは格が上で、愛想がよく、しかも太夫のようにフラれることはないので庶民にはかえって人気があったといわれます。
こうやって歴史を振り返ってみると、昔の風俗は風流であり、文化があり、生活に密着しているがよく分かります。それに比べると今の風俗業界は粋じゃないし、お世辞にも品があるとはいえません。そこで働く風俗嬢はがんばっていると思いますけど。