[1302]放射性物質トリチウム

2019年8月17日

東京電力福島第一原子力発電所からトリチウムを含む汚染水が海に流出しているとの報道がありました。

皆さん心配だろうと思います。


さてこのトリチウム、どのような放射性物質なのでしょう?

トリチウムは水素の放射性物質で水分子と混ざって水として存在します。

え?水?よくわからない?

トリチウムはつまり水素と同じ仲間。
水素より中性子が多いので水素より重たい。三重水素ともいわれます。

一応放射性物質ですが半減期は約12年、放出する放射線はベータ線で強さも微弱です。トリチウムは自然界にも存在し、雨水にもは1リットル当たりおよそ1ベクレルの濃度で含まれるものです。

人体に取り込んだとしても、水ですから、やがて放出されます。体内にとどまっていたとしても微弱なベータ線は悪さをしません。

福島第一原発から漏れている汚染水に含まれるトリチウムは17万ベクレル。国の放出基準値は1リットル当たり6万ベクレルですから、これは基準値を超えているので何とかしなければならない。

福島第一原発では汚染水をろ過するALPSという設備を投入しましたが、このALPSで除去できるのはトリチウムを除く62種類の核種。

なぜトリチウムが除去できないのかというと、これは三重水素として結合し、水として存在しているからです。水そのものなので、ろ過しても通過してしまうのでしょう。

しかし、トリチウムを除去する方法はじつはあるのです。その方法は水を水分子まで分解し、その中の三重水素部分だけを取り除く方法です。しかしこれは大変緻密な作業で莫大なお金がかかります。

こんなに細かいことをするより、希釈して海に流したほうがお金もかからないし、健康被害もないし、結局一番いい方法なのですが、今のところ社会が許さないのです。

福島第一原発からはどんな放射性物質も一個たりとも放出してはならないという空気ですから。政府はもっと「これなら安全」「ここから危険」という明確な基準の下、対処すべきでしょう。

◆ポイント

  • トリチウムはもともと自然界に存在する
  • トリチウムは水として存在する
  • トリチウムの放射能は微弱
  • トリチウムの除去は難しい
  • トリチウムの除去は不要