[1012]石膏・石灰・漆喰

似て非なるもの。石膏、石灰(生石灰、消石灰)そして漆喰。

これらはどういうものかは漠然とはわかっていてもいざ「どう違うのか?」と問われたら、違いを答えるのはなかなか難しいものです。

まず石灰(せっかい)ですが、原料の石灰石は石灰岩から採れます。石灰岩のおおもとは珊瑚礁で、これが地殻変動などの長年の月日を経て地表に出現し、岩石化したのが石灰岩です。石灰岩は侵食されやすく、地表に現れた後に風雨に侵食されてできたのが鍾乳洞です。

石灰はカルシウムでできていると思って間違いはなく、そのカルシウムの形態が微妙に異なると、呼び名も変わってまいります。

まず石灰岩を現場から削り取ったままの状態。これは石灰石といいます。主成分は炭酸カルシウム〔CaCO3〕です。この石灰石を900℃以上で焼きますと、二酸化炭素が放出されて「酸化カルシウム」になります。これが生石灰。化学式は〔CaO〕です。式から(CO2)が減ったのがわかります。ちなみに生石灰は(せいせっかい)と読みます。

この生石灰に水を反応させると消石灰(しょうせっかい=水酸化カルシウム)になります。〔CaO+H2O=Ca(OH)2〕消石灰は園芸肥料や運動会のライン引きの白い粉としてもおなじみです。

この消石灰に糊剤、すさ(きざんだ麻など)を混ぜて水で練り合わせたものが日本古来の左官材料として使用されている漆喰です。消石灰と漆喰は混ぜ物があるかないかの違いでだけで、本質的には同じものです。

漆喰として塗られた(水酸化カルシウムCa(OH)2)は空気中の炭酸ガスを吸収してゆっくり石灰石に戻ります。この作用が漆喰の有害物質吸着作用として注目され健康に良いとされるゆえんなのです。

漆喰が石灰に戻る式:

Ca(OH)2(消石灰)+CO2(二酸化炭素)⇒CACO3(石灰石)+H2O(水:蒸発)

そして、石膏。美術室においてある白い塑像や骨折のときにお世話になるギプスは石膏でできています。意外なところでは糖衣錠のコーティングや豆腐の凝固材としても石膏が使われています。

石膏は硫酸カルシウム(CaSO4)を主成分とする物質で、通常目にしているものは2分子の結晶水をもつ硫酸カルシウム「二水石膏(CaSO4・2H20)」です。

二水石膏は120℃~150℃に加熱すると結晶水全体の3/2を失って「焼せっこう」になります。「焼せっこう」に水を加えると流動状になり反応を起こして再び元の「二水せっこう」に戻って固まります。この性質を利用し、板状に固化させたものが建築材料の石膏ボードというわけです。

石膏は天然石として存在し、それは「バサニ石」といわれますが、土壌中及び溶岩内から発見されています。天然のものは無色透明の結晶となっている美しい岩石です。

今回はちょっとややこしくなったのでまとめます。

まとめ:

・石灰石(炭酸カルシウム〔CaCO3〕)を焼く⇒生石灰[CaO]
・生石灰に水を加えて精製⇒消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)
・消石灰=ほとんど漆喰と同じ。
・石膏は硫酸カルシウム(CaSO4)⇒石灰石炭酸カルシウムとは別物
・石膏も漆喰も壁材、左官材として使う

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