[134a]秘薬

未開人には、自分の弱いところを他の動物の同じ部位を摂取することで治癒しようという共通の信仰がある。もちろん迷信だが、現代人の発想の中にそういう思想が生きているのが面白い。

中華街や漢方の店に行くと、虎のペニスやオットセイのペニスが強請剤として売っている。また、繁華街のホルモン料理店では豚の睾丸やペニスを食わせる店もあり、諸氏諸兄に人気だとか。欧州では、長く使った靴の底皮や数千年の風雪に耐えたミイラの粉、人畜を殺すマムシの肉なども強精剤として使われたという。

オットセイはたくさんのメスを従え、生殖力旺盛だからそのペニスがもてはやされるのは心情的にはよくわかるが、そのペニスを削って飲んだところで自分の生殖力が旺盛になると思うのは大いに勘違いである。

それよりも、卵などのビタミンB群を多く含んだ食品の方がよっぽど性欲は高まる。ビタミンB群は神経の疲労を回復し、繊細な感覚を回復してくれる。また、フグに含まれるテトロドキシンは抹消血行を盛んにするので性器の充血を促し性欲を高める効果がある。したがって、これらは強精食品と呼べるものである。

だいぶ前の話だが、正倉院の供物の中に「テリアカ」という秘薬があって、その正体が長年わからなかった。ところがこれが欧州伝来のマムシの肉から作られる「テリアック」というものだと言うことが判明した。強精剤は男にとって永遠のテーマなのかもしれない。

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