[190]1円切手

2018年1月3日

手元に1円切手があればそれを見ながら読んでもらうと良いと思う。といっても今時なかなか1円切手を使う機会も無いのだけど。

1円切手に描かれた人物は前島密(まえじまひそか 1835 – 1919)。幕末に郵便事業を国営化した立役者としてその功績が称えられている。1円切手というベーシックな切手の絵柄とされたのも、創設者への敬意の現れであると思う。

前島密が国営の郵便制度を確立したのは1873年(明治6年)のこと。1870年、郵便制度調査のため渡英し、翌年帰国した密は駅逓頭(えきていのかみ、今で言う郵政大臣)に任ぜられ、郵便制度の創設に力を尽くす。また鉄道、海運、電信電話、教育など幅広い分野で活躍し、大きな足跡を残した前島密は日本の郵便の父と呼ばれた。

それ以前にも郵便はあったが、民営である飛脚制度の元、郵便料金もまちまちだった。前島密はこれを統一し、国による独占事業として運営し、独占であるがゆえに低価格でかつ全国どこでも一律料金という制度を確立したのだ。これより郵便の民営を禁じている。

郵便切手もこの時に発案され、1871年に採用された。同時におなじみの赤いポストも設置された。前島密デザインの切手は1円切手だけでなく、肖像画を配した記念切手なども数多く出され、現在使われなくなった切手を含めて13種類が発行されている。

さて、明治どころか昭和も遠くになりつつある昨今、クロネコメール便のように民間の郵便が復活しつつある。親方日の丸な郵便も時代にそぐわなくなってきて、前島さんも複雑な気持ちでしょうな。でもこれも郵便事業の確立という偉業があってのことだし、前島さんも満足なんじゃないでしょうかねー。

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