[239]作務着
さむぎと読みます。禅宗では座禅のほかに戸外で作業を行う修行があります。これを作務(さむ)といいますが、その際に着る作業着が作務着です。作務衣(さむえ)ともいいますが、作務着が正式の名称です。
作務着はいってみればジャージの上下みたいなものですが、戸外での作業に適したつくりになっています。まず、生地は木綿か木綿と麻を混紡したもので非常に丈夫です。また、色は藍色ですが、これは天然染料の藍を使うからです。
藍には防虫作用があり戸外で作業する場合重宝されます。元々はインドで使われていた藍ですが、アメリカの開拓時代に活躍したジーンズも戸外で作業するための作業着で、これにも虫除けに藍が使われています。いわゆるインディゴブルーですね。また、藍は殺菌作用もあることから飲んで薬にしたり、皮膚炎の抑制に効いたりします。
作務着は日本版作業着ですが、その歴史は意外と浅く、発祥は江戸時代。当時の着物にたすきをかけた簡単なものが原型だったようです。戦前から戦後にかけて、その着物の下にはかまのようなものをはくようになり、そのうち袖口や裾にゴムが入ったものになって現在の形になりました。今の形になったのは昭和30年以降のことなんですね。
作務着と似ているものに甚平(じんべい)があります。甚平は生地も薄く戸外で作業するものではありません。あくまでも室内着です。袖口や裾もラフな縫製になっているのが特長。
作務着はカジュアルなものと思われやすいですが、きっちり着こなせば正式な場に出てもおかしくないほどの風格があります。特に料理人、職人、陶芸家、染色家にとっては職業の性質からみても正式なものといえるのではないでしょうか?
ヒゲ伸ばしてぼさぼさの頭でも不思議と似合ってしまう作務着。一着いかがですか?