[680]サーベルタイガー

約25,000年前ロサンゼルス郊外のランチョ・ラ・ブレアは、地表に原油がしみ出し一面タールの池となっていました。池の表面は枯れ草や砂などが積もり、見た目にはただの陸地や雨水がたまって池のように見えます。

しかし一歩踏み入れればタールの沼。そこに踏み込んで足をとられた大型草食動物をねらって、肉食のサーベルタイガーもまたこの池にはまり込んでしまう。現在この地域からは2,000体以上のサーベルタイガーの骨格が発見されているのです。

サーベルタイガーは、今から約10,000年前に絶滅したネコ科の肉食獣。極端に発達した上顎の犬歯が、まるでサーベル(洋剣)のように立派なことから、この名前がつけられました。

このネコ科動物は哺乳類の捕食者として進化してきました。その祖先は暁新世から始新世中頃まで存在したミアキスに発し、始新世後期に出現したディニクチスに求められます。それは北アメリカに生息し、漸新世に入ると三つの系統を産み出し、その一つがサーベルタイガーのグループです。

大きさは現生のライオンほどもあり、口の両側に長く突き出した犬歯の長さは24cmもあり、まさに短剣。牙は強度と鋭利さを保つために、その断面は楕円形となっており、鋸歯状の小さなでこぼこがついている。サーベルタイガーは獲物を倒すときにはこの牙を相手に突き立てて引き裂いて致命傷を与えたり、失血死させたでしょう。

各地で発見されるサーベルタイガーの骨格の中には、獲物と闘い、自分も損傷を受けた跡が残っているものもあります 。このことからもサーベルタイガーが勇猛な食肉獣であったことがうかがえます。

サーベルタイガーは約10,000年前に同じ時期に生きたマンモスなどと一緒に絶滅しています。絶滅の原因は地球の環境が激変したことも原因の一つだったでしょうが、それ以上にアジアから渡ってきた新しい捕食者である人類の登場が大きな意味をもつとされています。卓越したハンティングの技術を持った人々がマンモスを乱獲し生態系を乱した事は容易に想像できるからです。

サーベルタイガーとは?