[686]いわし
魚ヘンに弱いと書いていわし(鰯)。鮮度落ちが早く身が崩れやすいことから弱い魚なのか、あるいは群れをなしてほかの魚や鳥の捕獲から逃げるのみの弱い立場の魚という意味なのかは定かではありません。しかし捕獲から逃げるということはそれだけほかの魚に狙われるほどおいしい魚だからだ、とも解釈できます。そして実際に新鮮な鰯はとてもおいしい魚です。
養殖の魚が多い昨今ですが、鰯は近海の天然ものが現代でも豊富に獲れる貴重な魚です。鮮度が落ちやすい魚ですが、輸送技術の進歩のおかげで鮮度の高い鰯が店頭に並ぶようになりました。昔から肥料としても多く使われてきた魚ですが肥料にしてしまってはもったいない。栄養価も高い魚なのでまるごといただいてしまいましょう。今の時期は丸ごとつみれにして、お鍋がおいしい。
鰯には大きく分けて、真鰯(まいわし)、片口鰯(かたくちいわし)、潤目鰯(うるめいわし)の三種があります。
真鰯は最も漁獲量の多い鰯で全国的に広く分布しています。15cm程度のものを中羽鰯、20cm程度に成長したものを大羽鰯といいます。真鰯で作った煮干を平子煮干といいます。
片口鰯は口の上部より下部が小さいので片口鰯と言われています。身に歯ごたえがあるので刺し身がおいしい。特に瀬戸内海での漁獲が多くなっています。片口鰯で作った煮干は片口煮干といわれ、煮干としては生産量も一番多いです。
潤目鰯は目が潤んでいるように見えるので潤目鰯といわれます。脂肪分が少ないので干物にむきます。日本海側で多く採れます。潤目鰯を原料にした潤目煮干は生産量が最も少ない煮干で、長崎が主産地です。潤目煮干はくせのない独特の甘さをもったダシがとれます。
鰯の旬は5月から10月で旬の初めは中羽、夏になると大羽になります。片口鰯、潤目鰯の旬も5月から8月です。鰯はとにかく鮮度が命。身が固いものが新鮮で丸々と太ったものを選びましょう。
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