[708]バイオリン

バイオリンという楽器は幼少の頃から習わないとなかなかものにならないといいます。しかし、大人から始めてもそれなりに音は出るようになるし、人に聞かせるのでなければ自己満足程度には上達します。したがって、バイオリンを始めるのは今からでも遅くはありません。

ただし、バイオリンは高い楽器です。子供に買い与えるのなら最初は小さく値段もそこそこですが、大人が始める場合は最初に黙って100万円はかかります。

これはもちろん楽器代だけのはなし。レッスン料は別。また100万円の金を掛けるだけの勇気が無いなら始めないほうがいいでしょう。逆に100万円大枚をはたけば途中で挫折することも無いでしょう。それにましてバイオリンという楽器は100万円くらい出さないと良いのが無いし、良い音が出ない。言い換えれば初心者のうちほど良い楽器が必要、これはどの分野でもいえることですが。

バイオリンといえばアマティ、ストラディバリ、ガルネリが有名。これを3大名器といいます。これらはイタリアのクレモナというところで生まれました。それだけでなく、クレモナというところは弦楽器のメッカみたいなところで、今でもマエストロリュータイオといわれるる弦楽器製作師匠が技を競っています。

クレモナにはこのマエストロを養成する学校もあるので、われこそはと思う人はチャレンジしてみるのもいいでしょう。何しろこれからは手に職がないと生きていけない時代ですから。その学校はストラディバリ没後200年を記念して設立されたもので、誰でも入学できます。カリキュラムも秘密主義でなく明快に公開されていて、例えば誰でもストラディバリの名器と同じものを作ることができる。ただし音色は同じというわけにはいきませんが。

クレモナでは今でも名器が生まれていますが、ちゃんとしたバイオリンを一挺作るには一人の職人がかかりっきりでやっても2ヶ月かかる。つまり一年間で六挺しかできない。一人の職人が2ヶ月もかかって作りバイオリン。考えてみたら100万円は安いのではないでしょうか。

イタリアの小都市クレモナの歴史は必ずしも順風満帆ではありませんでした。1600年から1800年にかけては弦楽器製作の街として発達しましたが1900年になると単なる古い街としての評価しか下らず、その伝統ある工房はことごとく壊され、ただの町になってしまいました。

1900年以降、事の重大さに気がついた識者がこの町を弦楽器のメッカとして後世に残すように尽力した結果、今日ではクレモナはバイオリン生産地としてみごとに復興。今日アントニオ・ストラディバリ の墓碑銘がローマ公園の一角、ローマ銀行クレモナ支店寄りのところに赤茶色の大理石にはめこまれて安置されています。