[770]平熱

【日本人の平熱36.5℃はうそである】

最近の臨床生理学では、日本人の平熱は36.89±0.34℃であるとされています。この数字を見て、意外と高いな、と思われた方も多いと思います。微熱とされる37℃の体温もこの数字で平熱の範囲であるわわけです。もっともこの体温は体の表面ではなく深層部の温度です。

深層部の温度を普通の体温計で測るには10分以上脇に挟んでおく必要があります。しかし「3分計」だからといって3分で測るのをやめてしまうので、体温計は36.5℃くらいにしか表示されません。その結果36.5℃というのが日本人の「平熱である」という間違った常識を生んでしまったようです。

最近低体温症という症状を呈する人も増えており、平熱の低い人も多くいます。35℃を下回ると一般に低体温症といわれます。低体温症は自律神経の異常によって引き起こされますが、空調が発達して自然の暑さ寒さを受けなくなった生活環境もその一因でしょう。

体温は体の表面と深層部では違っているため、本当は深層部の温度を語らなければなりません。深層部の体温は内臓の活動に大きく影響するからです。表面の温度が低くても、深層部の温度が正常であればなんら問題はありません。平熱が低い人も元気でいられるのは、じつは深層部の温度は正常だからなのです。

本当に低体温になったら命にかかわります。体温が35℃以下になると寒気や皮膚感覚が麻痺してきます。34℃以下になると筋力は低下し、精神は軽度の錯乱状態や無関心状態になります。30℃以下では身体が強直し精神は完全に錯乱状態に陥ります。28℃以下では昏睡状態に陥り、瞳孔が開きやがて心臓の活動が停止し、死亡します。冬山で遭難し凍死するということはこのように体温の低下によって起こるのです。

次回も体温の話です。