[1030]腐敗と発酵

2015年8月21日

腐敗も発酵も微生物の仕業で起こります。微生物は地球上の掃除屋としてあらゆるものを分解します。「分解」と言葉では言いますが、これはつまり微生物にとって生きるための食事なのです。その食事の仕方で腐敗と発酵に分けていますが、これは人間にとって有益であれば発酵、不利益であれば腐敗と定義しいています。

また化学的にも発酵と腐敗は別々に定義しています。

発酵:糖類が分解されて乳酸、アルコールなどが生成されること

腐敗:タンパク質、アミノ酸などが分解されて硫化水素やアンモニアが生成されること

腐敗のほうの硫化水素やアンモニアは私たちにとって不利益であるため、それを不快臭として感じ取ります。発酵によって生じたアルコールはおいしいお酒になりますので、それを不快とは思わず、むしろおいしいものとして歓迎します。つまり発酵も腐敗も、私たち人間にとっての価値基準によって使い分けられているものなのです

食品の腐敗が微生物によることを明快に証明した人物はルイ・パスツール。わずか150年ほど前の1860年代のことです。しかしそれは発見したのがその時代なのであって、それ以前から私たちは発酵食品を作り、また食品を腐敗させない工夫を行ってきました。

発酵食品の主なものとしては、しょうゆ、味噌、酒、酢、チーズ、ヨーグルト、パン、ぬか漬け、キムチなど。日本の伝統的な食品には発酵食品が多いことが分かります。

食品を腐敗から守る方法としては、干物、ビン詰、缶詰、酢漬け、アルコール漬け、塩漬け、佃煮、砂糖煮などがあります。

腐敗したものは不快臭がするため、人体に防御反応が起きて食べようとはしませんが、野生動物が腐敗した肉を食べるのを見てもわかるように、腐敗したものを食べたからといってただちに食中毒になるとは限りません。

しかし食品衛生上問題となる特定の病原微生物が、食品中で増殖または毒素を生産した場合は、その食品を人が食べることで食中毒が起こります。それは見かけでは判断できないため、腐敗した食品はすべて食べてはいけないといえるのです。

これからの科学は微生物を抜きにしては考えられないほど重要になりつつあります。正しい知識を身に付けて、微生物と上手につき合っていくことが、私たちの生活の上でとても大切なことなのです。