[1075]はしか(麻疹)
2007年の3月から5月は「はしか(麻疹=ましん)」が高校生や大学生を対象に猛威を振るいました。大学では異例の休講騒ぎ。これは一体どういうことでしょうか?
「はしか」といえば元来子供がかかるもの。母子手帳にその履歴を記入するくらいですから。そして一回かかればその後は二度とかからないものとされます。まさにそのとおり。したがって、今回感染した高校生大学生は、この年齢にして初めてかかったのです。
なぜこの年代に「はしか」が流行したのかというと、ちょうど彼らが6歳くらいのときは、新三種混合(麻疹、おたふく風邪、風疹)の予防接種によって副作用が出て、それが問題になった時代なのです。親とすれば危険な予防接種は敬遠したくなります。親が接種をするかどうかを判断できた時代でもありました。そのときに予防接種をしなかった世代が今感染するはめになったといえます。
また、そのときにの予防接種をした人も、今回かかっています。それはワクチンによってできた抗体は弱く、約10年でその効果が切れるとされます。今回集団感染した世代は、この予防接種をした世代、そして予防接種のワクチンが弱かった時代の世代なのです。
「はしか」にかかった場合は抗体は頑強なので一生効果が切れることはありません。「はしか」に一回でもかかった人は大丈夫です。この世代以外の世代はほとんど一度は感染しているので、新たに集団感染ということはありえません。しかしまれに再度かかる場合もあるので注意しましょう。特に妊娠中の女性がに「はしか」にかかると子宮収縮による流産を起こすことがあります。
「はしか」はハシカウイルスによる感染症です。感染力は強く、感染者と一緒に居るだけで約95%の人にうつります。そのため欧米では対策が進んで今では根絶されたといわれるほどです。
しかし日本はこの点非常に遅れており、年間10万人もの発病者がいます。これをもって「はしかの輸出国」と揶揄されています。海外では日本に行くときには「はしか」の予防接種をするところもあるといいます。先日もカナダに修学旅行に出かけた日本の女子高生が現地で発病し、空港を通してもらえず予定どおり帰国できなかった例もありました。
しかし、病気とはいえ何でも根絶するのがいいともいえません。はしかのように重大な症状になりにくい(無いとはいえません)感染症はむしろ残しておき、その中で「たくましく生きる人類を育てる」のも、我々現代人の仕事かもしれません。
※三種混合ワクチン=ジフテリア・破傷風・百日咳
※新三種混合ワクチン=麻疹・流行性耳下腺炎(おたふく風邪)・風疹
※風疹=三日ばしか(はしかとは別物です)
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