[144]マルチ商法
「ちょっといい話があるんだけど」。友人にこういわれ「何?」と聞き返しても詳しくは言わない。とりあえず説明会に行こうと誘われ説明会場に行くと熱気ムンムン。そこで話を聞いて初めてマルチだと知る。話を聞いているときわめて巧みに好奇心をくすぐる。思わずその気になってしまう。誰しも経験があるのではないだろうか?
マルチ商法は商品を販売するのではあるけれども、その本当の狙いは商品販売ではなく新たな会員を集めることでその手数料を稼ぐもの。これは無限連鎖講防止法で「破たんすべき性質のもの」として禁止されている。
これってマルチでしょ?とかねずみ講では?とか聞くと決まってそうではないという。しかし、これはマルチなのである。自分に話が回ってきた時はすでにみんなに話は回っており、儲けることはできないと思ったほうが間違いない。友達を巻き込まないほうがいい。へたすると友達を無くすからだ。
私の友人でも長いことアムウェイに身を置いていた人物がいる。彼から毎年年賀状がくる。普通、年賀状といえばハガキなのだが、彼からの年賀状は分厚い封筒で来る。開けてみると中には延々とアムウェイの良い所が書き込まれている。自筆だったから大変な労力だったと思う。その中に書かれていることはアムウェイのすばらしさ、レベルが上がれば自分は何もしなくても年収800万円以上になること。そして、とどめはなぜこんなにいいことなのに始めないのかというくだり。
これは熱病だ。良い物があれば買わなくてはいけない。なぜ買わないのか?とくればもう病気としか言いようが無い。良い物は世の中にごまんとあるだろう。しかし、それをことごとく買う必要は無い。良いけど買わない。こういう普通の考え方が彼らには無い。
今年、彼から年賀状がきた。分厚い封書ではなく、普通の年賀はがきだ。アムウェイをやめたらしい。彼は普通のよき友達に戻った。