[998]失火責任(3)

失火責任については過去2回述べています。

「失火ノ責任ニ関スル法律」
『民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス』

失火の場合は、重大な過失を除きその責任は免除されるというものです。つまり火事を出しても隣家に対して責任は問われません。しかしそれが重大な過失でないことが原則です。

失火の原因が重大な過失と認められたときは、隣家に対して賠償責任が生じます。過去重大な過失として裁判で認められたのは以下のとおりです。

1.寝タバコ
2.電気コンロをつけたまま寝てしまい毛布がコンロに触れて発火した
3.電熱器を布団に入れこたつ代りに使った
4.わらが産卵している倉庫でタバコの吸殻を捨てた
5.石油ストーブのそばでガソリンを入れた蓋なし容器を倒してしまった
6.火鉢で炭火を起こす際にアルコールを火鉢に注いだ
7.てんぷら油を火にかけたまま台所を離れた

重い過失とは、少し注意すれば重大な結果を予見できたのにそれを怠ったと考えられるケースをいいます。このような場合は重過失とされ失火の責任を追及されるのです。

ところが、火事を出した人の家は燃えてしまっているし、そこにはもう居られないとばかり、土地を売却してどこかに行ってしまうケースが多いとか。こうなるとたとえ裁判に勝っても、賠償金を取るのは難しくなってしまいます。

もし、火事の原因者が逃げてしまいそうなときは、直ちに裁判所に火元の土地を差し押さえるよう申し立てるのが良策です。差し押さえられてしまえばその土地の売却はできなくなるからです。

しかし、このように裁判を起こすには、お金と労力、そして強靭な精神力が必要となります。自分の土地家屋は自分で守るというスタンスで保険に入っておくことは、余計な労力を消耗しない人生の知恵であるかもしれません。

なお、アパートの場合、大家さんが失火をしてしまった場合は、その失火責任が軽微であっても入居人に対して賠償金を支払わなければなりません。これは民法上の契約の履行責任があるからです。同じように借家人も失火の時には賠償責任がありますので借家人保険は必須となります。

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