[1035]フリーズドライ

フリーズドライとは、フリーズ、つまり冷凍してドライ、つまり乾燥する方法のことをいいます。凍らせてから乾燥するというと、いったいどうやるのか、と疑問になります。液体を凍らせることは可能ですが、それを乾燥するために火にかければ、せっかく冷凍したものが解けてしまうと想像するからです。

しかし、これは常温1気圧の状態のときの話で、これが低温、真空の場合は様子が異なります。水の沸騰する温度は1気圧では100℃ですが、気圧が低くなると沸点が90℃、80℃と徐々に低くなります。より気圧を下げていくと、水が凍っているような氷点下でも沸点に達します。この状態では凍っている水が沸騰しても水にならず、いきなり水蒸気になります。これを昇華といいますが、この作用を利用した乾燥技術がフリーズドライです。

フリーズドライは蒸発という過程がないため、ビタミンやうまみ成分の流失が少ないという利点があります。乾燥率が高く、素材そのままのフレッシュな状態で長期保存ができ、水や熱湯での復元性・溶解性が非常よく、また乾燥している状態のため軽量で常温の保管が可能という流通面でのメリットも大きいのが特徴です。

フリーズドライを世に知らしめたのはネスカフェゴールドブレンドのテレビCMです。どなたも一度は目にしたことでしょう。抽出したコーヒーをフリーズドライで乾燥させて製品にしたインスタントコーヒーは、フリーズドライ製法によっておいしさを確立したといって過言ではありません。

ところで、インスタントコーヒーはフリーズドライ製法で作られたものばかりではありません。フリーズドライ製法以前のスプレードライ製法で作られたものも数多くあります。

スプレードライ製法とは、抽出したコーヒー液を高温のドラムに吹き付けで瞬時に乾燥する方法です。できた製品は微粉状となり、冷たい水にも溶けやすいという利点があります。量産性が高く、価格も安くできますが、味や風味の点ではフリーズドライにかないません。前述のゴールドブレンドはフリーズドライ製法で生産されていますが、同じネスレのエクセラはこちらのスプレードライ製法で作られています。

フリーズドライ製法は原型を損なわずに乾燥させる技術として、インスタントコーヒーのみならずさまざまな方面で今後利用されていくでしょう。興味深いところでは、ペットの保存。死んでしまったペットを保存する方法は以前は剥製しかありませんでしたが、フリーズドライ処理を行うことで、生きているそのままの姿を残すことができるようになっています。