〔25〕高まる物欲

今年は本当に暖かいですね。去年以前遡ると11月の初旬からコートを着ていたような気がしますが、今年はジャケットや薄手のブルゾンで充分間に合ってしまいます。あと1カ月我慢して、来年1月のバーゲンでコートを買おうか、やっぱりお目当てのものがあったら、今買っておいた方がいいのか、悩みが尽きない私です。

冬のファッションというのは夏のそれよりも、選んだり購入を決めたりするまでにやたらと時間がかかる。素材や着た時のシルエットの重要性もさる事ながら、何せ価格が高い!

「ワードロープの中にあったら嬉しいけど、今月は諦めよう」と見なかったふりをし、心の中で泣くことのなんと多いことか。

会社でも相当なストレスが溜まっているのだ。プライベートでも我慢我慢なんて言ってたら、そのうちストレス性の胃炎なんぞになってしまうことだってあるかもしれない。

そうだ、“生きている”ことはイコール“金のかかる”ことなのだ。

もうすぐクリスマスや忘年会など、色々なイベントがあるんだもん。(こういう時に「ボーナス」というものがないのは非常に恨めしいが)そうだ、買ってしまおう。自分へのご褒美だ。

そう思い、先日ラストシーンの白いジャケットを購入した。ウエストの部分をマークする今年風の太ベルト、シンプルに立てる襟、そして丈、着心地の良さ、そのジャケットは全てが私の好みに合っていた。

3万円という価格は多少イタかったが、これを着て歩くことによって、うきうき気分が増殖し、きらびやかに、華麗に、こころおきなく今年を締めくくることができれば、こんなお得な買い物はないだろう、そう自分に言い聞かせた。もちろん「今月はもうこれで終わりにしよ」とはらをくくることも忘れずに。

しかし、買い物というのはなんと因果なものだろう。

「今月はもうこれで終わりにしよう」という決心も、そのジャケットが自分の手中に入ったとたん、もろくも崩れ去り、私は無意識的にと言っていいほど発作的に、靴売り場に向かい、走りだしていたのだ。

「このジャケットに合う、ブーツが欲しい」

その真摯な一点の曇りも無い純粋な気持ちは、私をどうしようもない“強欲ババァ”にさせていた。靴売り場に並ぶ色とりどりのパンプスやブーツ。思わずため息をつく。「店ごと買い占めたい」と真剣に考える私がそこにいた。

「やっぱり今年はちょっとヒール高めの細身のブーツよね」そんな風に様々なブーツを物色し、ターゲットを絞った。店員に自分のサイズに合ったものを出してきてもらう。

いざ履こうとしたその瞬間だった。

「は、はいらない」

なんと内側のジッパーが、ふくらはぎのちょうど中間点で止まってしまったのだ。正直ビックリした。

いつのまにふくらはぎなんぞに肉がついていたのだろう。

私の身体は「もうこれ以上あがらないよ。無理に上げたら壊れるよ」というSOSをすぐさま私の脳に送り始めた。

しかし、脳から心にそう発信されればされるほど、私の「履きたい」欲はのぼりつめていく。悲しいほどに、切ないほどに、私はジッパーの途中からはみだしてた、自分が勝手に蓄えていたいまいましい肉の塊を見ていた。

そう言えば昔ピーコが言ってたよな、「服や装飾品にかけるお金があるのなら、まず自分の身体そのものにお金をかけなさい」と。とほほ。

そしてブーツを泣く泣く諦めた私は、次なるターゲット(そのジャケットに合った)アクセやボトム、ニットを探すため、走りまくったのだった。

その一日で使ったお金、しめて6万。

ストレスフルな社会で生きている限り、私は「物欲」というものを抑えることはできないんだろうなぁ。

2001.11.30

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