[36]昆虫たちの世界(蚤)
第36回
■昆虫たちの世界(蚤)
《蚤(のみ)》
戦前に生まれた人達には、これらの虫たちはおなじみだと思いますが、特に「のみ」は凄かったです。昭和の初め頃は家の奥さん達は皆さん「丸髷」を結って居ましたよね。私の母なんかも「丸髷」でした。
こう云う髷を結っている人の生活・・特に夜寝るときはどうしていたと思いますか? 枕です。此の当時の髷を結った人達は「箱枕」を使っていました。
「箱枕」とは木製の台・・幅約30cmくらい、奥行き10cm位、高さ10cm位の箱で、その木には上等のものは、漆塗りだの、蒔絵を施したりした高級な物までありました。その上に布製の丸い筒型の枕を箱に取り付けたものです・枕の直径は10cm位だと思います。この枕を首に当てがって寝るのです。(よくこんな姿で寝られましたなぁ・・と思いますけどねぇ)・・・そうそう此処では「箱枕」のお話をするのではありませんでした「蚤」のお話です。
「蚤」は昼夜に関係なく飛んで歩いているんです。小さいくせにジャンプ力は凄いですね。夜になると天井裏で「ねずみ」が毎晩運動会をやっていますので、恐らく「蚤」をばらまいていたのでしょう。
「蚤」に咬まれるとすごくかゆいです。子供達は眠いですから、寝ながらボリボリ掻いています。すると母は「蚤」捕りの名人ですね。指に一寸唾を付けて、電工石火の早業で捕まえます。捕まえたら直ぐに「箱枕」の木の部分に「蚤」を爪の先でパチンと潰して仕舞うんです。ですから「箱枕」の木の部分は蚤の潰した痕でブツブツになっているんです。
(これは又後で書きますが)・・昭和12年の頃です。千葉県の稲毛の先に「出州海岸」(でずかいがん)と云う海岸がありました。此処の浜辺にオンボロのお店の一軒家の寮がありました。夏休みにそこに行った時です。砂地から家に上がろうとしたとき、ヒョイと自分の足を見たときビックリしました。両足が真っ赤なんです。何と一面に「蚤」がたかつて居たんです。凄い数です。払いのけるのに大変でした。此の「蚤」は小さなもので、いつも見慣れている物とは大分小さい「蚤」でした。砂浜に「蚤」が住んでるとは知りませんでした。