[63]学校が引けて家に帰れば
第63回
■学校が引けて家に帰れば
小学校五年生 年は10才・・学校が終わるのは午後大体3時くらいですから、家に帰り着くのは3時半くらいです。その頃は宿題なんてありません。家に帰ってヤレヤレどころではないのです。私は五年生の時は妹四人、弟一人のおにいちゃんだった訳です。
まず洗濯。
洗濯と云っても自分たちが来ていたものの洗濯ではありません。大人や自分たちのものは、大きなものは「洗濯屋」が時折ご用聞きに来ていましたから、又日常のものは女中がいましたから自分ですることはありませんでした。
洗濯するものは小さな妹や弟の「おむつ」です。此の「おむつ」と云うものをご存じでしょうか?
昔は木綿の古着や浴衣などは、どこの家でも大抵とってありました。此の木綿の衣類を幅30cmくらいで長さ1m50位に切り揃えます。そして一枚一枚縫い合わせますと、大きな輪が出来ます。それが『おむつ』です。ですから模様はまちまちです。母は夜なべでいつも作っていました。
此の輪の布を横に二枚、縦に一枚を重ねて折りたたんで片づけておき、子供のお尻が汚れた時に、綺麗なものと取り替えてするものです。これが一日には何人かいると大変な量になってしまうので、その都度洗濯しないで、風呂場の片隅に積んであるのです。それを洗濯するのが、お兄ちゃんの役目です。別に母から云われたからするのではなく、家の手伝いは当たり前です。
まず、庭先にある井戸端に大きな盥(たらい)を物置から持ってきて、井戸のポンプで水を汲み上げます。そして洗濯板(今は見かけなくなりましたが、表面が波を打ってるように,ざらざらしている板です)汚れ物を盥に入れ、洗濯板の上に一枚づつ置いて、洗濯用の粉石けんを振りかけて、ゴシゴシと洗濯板に擦りつけるように揉み洗い摺るんです。
そうして何枚も洗って、一つ一つ絞って積んでおき寝全部終わったら、洗濯板を取り除いて、盥の中に洗ったものを入れ、ポンプで水を汲み上げす洗濯物をすすぐのですが、此の重いポンプが意外と大変なんです。すすぐのには何回も盥の水を換えなければならないからです。
後は絞って、干すだけですが庭先にある物干し台には、竹竿が上から四本くらい架かっていました。一本が5mくらいあって一枚づつの「おむつ」は輪になっていますから、それを順番に並べて干して行くんです。高いところは「三又」を使って上げます。
此の洗濯物が乾いたら、全部取り込んで、先程云ったように一組づつ畳んで、押入に入れて置きます。これで終了ですが仕事はまだ続きます。
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