[65]大変だった風呂焚き
第65回
■大変だった風呂焚き
お勝手の入り口を入ると右側に風呂の焚き口がありました。此の風呂は「石炭」で焚くものでした。
二。三年前までは黒光りしている割に大きな石炭でしたが、支那事変が起きたせいか知りませんが、年々石炭の質が悪くなって、この頃は「泥炭」となりました。石炭でなくまるで泥なんです。塊ではなく粉のような、しかも灰色をしているのです。これを燃やすのですから大変です。
此の風呂は水管式のボイラーでしたから、直熱式と違い、風呂の水が管の中を通過する時に熱せられる式ですから、燃料は節約出来るものだったようです。
先ず新聞紙を入れて火を付けます。そしてその上に小さく細くした乾いた木片を置いて火が移るのを見ます。この時竹筒で息を吹き込んで火を起こします。そして今度はその上に比較的細く裂いた薪を乗せて燃やして行きます。そして
燃え上がった頃合いを見て、石炭を入れ、石炭が燃えてくれば成功です。
後は石炭の燃え具合を見て、石炭を補給すれば良かったのです。所が「泥炭」
になってからは、こんな風には行かなくなりました。薪に火を付けるまでは同じですが、「泥炭」は火が付きません。入れすぎると却って火が消えてしまうんです。その上煙が凄くて、むせかえる状態です。
こんな状態でしたから、「泥炭」での風呂沸かしは止めました。そして「薪」だけにしたのです。
父が帰って来るのが大体9時頃です。そして叔父夫婦が隣に住んでいまして、風呂は家に入りに来ますから、全部で10人です。大体6時くらいから順番に入っても3時間はかかります。「薪」にしてから離れることが出来なくなったので、女中と交代で殆ど付きっきりの状態となりました。でもこの頃は世界は騒然と成っていたらしいですが、まだ各家庭は平和で、不自由なことがあっても幸せでした。
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