[68]寮生活?妹の高熱?
第68回
■寮生活?妹の高熱?
毎週日曜日には父が此の寮に来ます。女中が居るときは良いのですが、居ないときは夕飯の支度が大変です。あまり妹は当てになりませんから、昼間は海に出て、「牡蠣」を探して獲って来ます。「牡蠣」は岩のようなものにへばりついて居ますから、かすがいと云う金物を持って掻き落として来ますが、あまり大きなものは見つかりません。
そこで一寸内緒話ですが、悪いと思いながら「ハマグリ」を失敬します。塩が満ちてくる夕方を待ちます。するとこの頃は水が首の辺りまで来ます。その時に足の先で砂を掘るんです。すると大きな「ハマグリ」に出会うんです。とその時に海中に潜って獲るんです。獲ったものは手拭いにくるんで腰に縛り付けます。監視のおじさんも気が付きませんし、獲った数も知れています。
そして父は「牡蠣」「アサリ」「ハマグリ」を七輪の炭火で焼きながら晩酌をするのです。「わかめ」のみそ汁とご飯はチャンと準備してあります。ご飯だってガスがありませんから、竈で薪で焚くんですよ。
そして女中のいない、兄妹三人の生活していたある日の晩、下の妹が急に高熱を出しました。慌てました、どうしたら良いのか分かりません。医者だって何処にあるのか知りません。勿論電話なんてありません。ただウロウロするだけです。
暫くして隣のおばちゃんに聞こう・・と思いました。だが隣と云っても100mも離れて居ましたが、思い切って尋ねてみました。
「おばちゃん、妹が熱を出しちゃったので、どうしたらいいですか?」と聞いたら、おばちゃんは「それは大変だ」「お医者さんは呼べないから、取り敢えずはキュウリを買っておいで」そして「買って来たら、細かく刻んで、洗面器に水を入れて、足を水に入れたら、刻んだキュウリをそこに入れて、足を揉んでおあげ」・・と。
「それと手拭いを濡らして額に当てることも忘れないで」と。「明日の朝までに熱が下がらなかったら医者に来てくれるように頼みなさいよ」と、親切に教えてくれました。そして次の朝にはウソのように熱が引いていたのです。そしてこの日に丁度女中も帰って来たので、その日のうちに女中に妹を東京に連れて帰って貰いました。
此の寮に行ったのはこの年が初めてで、そして最後でした。何でも相当に痛んでいたので取り壊したそうです。家に帰ったら又一人兄弟が増えていました。久しぶりの男の子でした。
こう云う風に子供の世界ではまだ平和の時代でしたが、外に目を向けると血なまぐさい事件が起きていました。
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