[101]知らなかった事件簿(2)映画火災で大惨事

2019年4月27日

第101回
■知らなかった事件簿(2)映画火災で大惨事
昭和5年3月10日の陸軍記念日に大きな火災が起きています。朝鮮半島の慶尚南道にある鎮海小学校などの生徒100人余りが、陸軍要塞司令部演武場で映画「乃木大將」を鑑賞中に、電気スイッチが原因でフィルムに引火、ガス爆発と大火災を引き起こしました。
この火災で鎮海高女生徒1人、鎮海小学校生徒73人、慶和小学校生徒24人、の計104人が焼死したそうです。このうち日本人が103人とのことですから、このあたりに住む人日本人の多さがうかがえます。此の演武場は約60坪の倉庫でしたが、倉庫ゆえ四方の窓は鉄格子で逃げることもできず、午後3時30分には鎮火しましたが、死者の殆どは窒息死だったとのこと。
此の惨事の原因は子供達が意外に早く会場に集まったために、不慣れな陸軍軍曹が早く映画を見せてやろうとして映写を始めましたが、スイッチを切り忘れた為に引火してしまったと云います。この頃のフィルムは前に書いた白木屋の火事と同じようにセルロイドでできており引火が早く、引火したら手が付けられない程の火災になってしまうのです。
此の演武場には非常口もなく、出口には鍵が掛かっていたと云います。これは明らかに陸軍の手落ちであり、要塞司令部の副官であった高橋大尉は自殺を図りましたが失敗に終わっています。
狭い日本人社会で100人近くの子供が犠牲に成ったと云うことから、街中挙げて追悼を行ったと云います。直接の責任者の軍曹は人事不省でしたが、3月17日に初めて被害を知って、舌を噛み自殺を図りましたがこれも失敗したと云います。
飯田昭一
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