カンボジアと日本の交流は古くからあり、仏教の聖地インドとともに宗教上訪問した日本人も少なくなかったとされています。アンコールワットの西塔門から十字回廊を右に曲がったあたりに日本人・森本右近太夫一房が残した墨書きがあります。単なる落書きですが歴史的意味合いが強いためそのまま残してあるのです。内容は1632年(寛永9年)にカンボジア(当時は南天竺と呼ばれた)に父母の菩提を弔う為に渡り仏像4体を奉納する、というようなことが書かれています。当時はアンコールワットはインドの祇園精舎と思われていたようです。
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森本右近太夫一房が残した墨書き。歴史的意味合いが深い一筆?内容は以下のとおり。
寛永九年正月初而此所来
生国日本/肥州之住人藤原之朝臣森本右近太夫/一房
御堂心為千里之海上渡
一念/之儀念生々世々娑婆寿生之思清者也為
其仏像四躰立奉者也
摂州津池田之住人森本儀太夫
右実名一吉善魂道仙士為娑婆
是書物也
尾州之国名谷之都後室其
老母亡魂明信大姉為後世是
書物也
寛永九年正月丗日
(2006年4月8日撮影) |
アンコールワットの第一回廊の壁画はそれぞれが物語になっており読み進むように巡ると面白い。訪問前に勉強しておくとよくわかると思います。西塔門から第一回廊に入るとまず目に付くのが西面南側の壁画「マハーバラータ」と西面北側「ラーマーヤナ」の物語です。「マハーバラータ」は王族家同士の戦い、「ラーマーヤナ」はラーマ王子と悪魔ラーヴァナとの戦いを表現した、ともにインド古代の物語です。
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西面北側の「ラーマーヤナ」の物語の壁画。ラーマ王子が加勢するサル軍の将ハヌマーンの肩に乗って、悪魔軍に矢を射るラーマ王子。(2006年4月8日撮影) |