[39]バンテアイ・スレイのレリーフはヒンドゥー教の神話

バンテアイ・スレイの彫刻はヒンドゥー教の神話を描いたものが多く、その彫りは深く優美です。造形美はアンコール遺跡の中でも群を抜いて洗練されています。一見の価値あり。
 


ヴィシュヌ神の妻ラクシュミーが象の聖水で身を清めているところ。下にはナーガを抱えるようにしているガルーダがいる。ガルーダはどこでもヴィシュヌ神の乗り物として登場する。
ラクシュミーは人気のある女性でヒンドゥーでは理想の女性とされている。(2006年4月9日撮影)


ラーマーヤナ物語の一説。さらわれたシータ姫を探してラーマ王子が森へ入るとサルの王スグリーヴァが泣いていた。理由を聞くと、兄サルに妻を奪われ、王の座も奪われたという。気の毒に思ったラーマ王子はスグリーヴァに加勢。中央には争うサルの兄弟、右側から矢を射るのがラーマ王子。この戦いでスグリーヴァは勝ち、今度はラーマ王子を助けることに。
(2006年4月9日撮影)

[38]バンテアイ・スレイのレリーフ

バンテアイ・スレイの彫刻が精緻なものが多く、これらが数多く残っているのは使われている砂岩の質がよかったためといわれています。
 


踊るシヴァ神。向かって右側には雷神インドラが太鼓を叩く。向かって左側にはカリーカラミヤという女性が座す。カリーカラミヤは大変美しい王妃であったが、王がなくなった後、その美貌ゆえ多くの王がこの女性を奪い合って争った。憂いたカリーは自分の魅力・美貌を破壊するようシヴァ神に頼み、シヴァ神はその望みどおり破壊してしまったという。シヴァ神は破壊の神であると同時に創造の神でもある。
(2006年4月9日撮影)


バンテアイ・スレイでもっとも美しいとされる塔門のレリーフ。カーラの上に乗るヴィシュヌ神。カーラはインド神話に登場する食欲旺盛な怪物。自らの体も食ってしまい頭と手しかない。
(2006年4月9日撮影)

[37]バンテアイ・スレイの遺跡訪問

シェムリアップから北東に約40km、車利用で約1時間の所にバンテアイ・スレイはあります。赤い砂岩が特徴のこの遺跡は朝日が当たる午前中が見ごろ。太陽の陽を受けて燃え上がるように見えます。あいにくの雨でも大丈夫。雨に濡れると朱色がいっそう引き立つからです。

このバンテアイ・スレイは「女の砦」という意味の寺院。創建年代は967年、シヴァ神とヴィシュヌ神に捧げられた周囲約400mほどの小さな寺院です。周囲は赤色砂岩とラテライトで作られ、一部レンガも使用されています。赤色が美しい遺跡です。
 

バンテアイスレイの東正面。赤い絨毯が敷き詰められているような錯覚に陥る。(2006年4月9日撮影)

当時のアンコール王朝の王師ヤジャニュバラーハの菩提寺として建設されたといわれているバンテアイスレイ。屋根の一部はレンガも使用された美しい遺跡です。レンガといっても日本のレンガとはだいぶ大きさが違います。もちろん大きいのです。

ここには、カンボジアのパンフレットにも多く記載されている優雅なレリーフ「東洋のモナリザ」があります。建物の側面には同じようなレリーフがたくさんあり、また周囲にロープが張られ近くにいけないため、おなじみのデパダー像を探すのに苦労しました。

かつて作家のアンドレ・マルローは、このデパダー像に魅せられ、盗掘して国外に持ち出そうとして逮捕されたことは有名は逸話です。それは1923年12月23日のこと。バンテアイスレイ寺院でレリーフを盗んだとして友人のルイ・シュヴァッソンとともにプノンペンで逮捕。1924年7月プノンペンの裁判所でマルローは禁固3年、友人のルイは禁固1年半の判決を受けた。一緒に妻も逮捕されましたが、無罪放免。帰国した妻は母国でアンドレの救援のため支援を求めました。その甲斐あってアンドレは減刑されフランスに帰ることができましたとさ。